NASA用仮想空間 その2
神木さんと、兎さんが、無重力空間に入ると、子供達と一緒に出てきた。
エリック:「大丈夫ですか?」
神木:「はい。仮想のオブジェクトなので壊れていないと思いますが、確認をお願いします」
エリック:「壊れないので問題ないですよ。それにしてもみなさん無重力での動作が上手ですね。人工脳モデルは無重力が得意とかないと思ったのですが…」
神木:「私と理人は酔った状態になりましたが、他の子供達は問題ないです」
エリック:「無重力を経験しているような発言ですが、体験しているのですか?」
神木:「前回のみなさんとの会合の後、子供達が無重力空間を作って遊んでいたので、無重力を体験しています」
エリック:「それで、みんな無重力での動きがスムーズなのですね。宇宙飛行士もみなさんと同じように仮想空間で無重力の動作での試験ができると、安価に高度の訓練ができますね」
悠人:「エリックさん、ハッチは金属でできているのですよね? 軽すぎますよ」
エリック:「金属ではなく、ファイバーですのでかなり軽いですよ。でも、重さは0です。扉の開閉は手動でできるように調整はしたのですが、重さまで気が回りませんでした」
悠人:「ファイバーってなんですか?」
エリック:「強化繊維プラスチックです。炭素繊維をプラスチックに混ぜたものです」
悠人:「へぇ。後で調べます」
颯人:「扉の開閉は自動だったのですか?」
エリック:「ヘッドマウントディスプレイで仮想環境に入れても、触覚グローブで扉を触ることはできますが正確に扉のハンドルを掴むことは難しいので、触れると2秒後に自動で開くように設定しています」
颯人:「わかりました」
山里;「先ほど、神木さんは子供達が無重力空間を作ったと言いましたが、彼らが仮想空間で自由にモノを作れるのですか?」
神木:「オブジェクトを作って配置することができます。彼らが作ったのは無重力の大きさの違う箱を繋げただけのものですよ」
エミリー:「神木さん達は触覚もあるのですよね? 人工脳モデルの発表会見で兎さんがピアノを弾かれていましたが、ピアノは内部構造も再現しているのですか?」
河野:「はい。スタインウェイと同じ構造ですから、ハンマーアクションです」
エミリー:「弦の振動で音を鳴らしていますか?」
河野:「そうです。弦やハンマーの強度、弾性を調整するだけでなく、調律までしています。」
エミリー:「ヘッドマウントディスプレイで調律をしているのですか?」
河野:「調律は兎さんがしています」
エミリー:「兎さんが調律したのですか?」
兎:「本来はチューニングハンマーを使ったり、フェルトを柔らかくするために突いたりしますが、設定変更だけでできるので簡単ですよ」
エミリー:「どこで、調律の勉強をしたのですか?」
あれ? エミリーさん、何か引っ掛かりを覚えているのかな…
兎:「You◯ubeで見て、勉強しました。それほど難しくはないですよ」
エミリーさんは私を見て「詩織さんもピアノを弾くのですか?」と言った。
詩織:「ピアノですか? 弾きますよ。仮想空間では弾けないですが…」
エミリーさんは何か疑問を持ったような気がする。
私の表情を読まれた?のかすぐに切り替えて、「すごいですね! そこまで物理計算を実現しているのですね。お茶やケーキを食べることができることにもびっくりしました。仮想空間の実現に計算機資源がかかるのではないのですか?」と言った。
河野:「はい。ものすごくGPUを消費します」
エミリー:「あ、カップを運んでくる時に紅茶が揺れていましたね。それも計算させているのですか?」
河野:「流体計算をして、リアルタイムレイトレースで光具合を表現しています」
エミリーがびっくりしている? そんなに大変だったの? 当たり前だと思ってた…
私と兎さんがいろいろ注文をつけて、ごめんなさい。
エリック:「次回には、扉の重さの調整を実施しておきます。ステーションでは微小重力もあるのでその計算もできるようにしておきますね。すると、宇宙食も食べられるようになります」
悠人:「宇宙食! どんな味なんだろう?」
エリック:「味!? 味か… お茶やケーキはどうやって実現しているのですか?」
河野:「味覚センサから得られた素材で塩味、酸味などを数値化しています。また、素材も弾力と噛んだことによる素材の分断も計算しています」
エリック:「え! 本当ですか? そこまで!」
河野:「基本データを作って、それを皆さんに調整してもらっています」
エリック:「そうですか…」
エリックまで、びっくりしている… 他の仮想環境を知らなかったけど、かなり非常識なのかな?




