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疑惑(前編)

 今日の香織お姉ちゃんは不機嫌だ…

「香織お姉ちゃん、何かあった?」

「千秋先生と出かけるのはやめようね。危険かもしれないから」

「どうして?」


 と話していると、千秋先生が到着した。


「香織お姉ちゃんが、千秋先生と出かけるのは危険かもしれないって言っているけど、危険なことするの?」

「…危険かどうかはわからない」

「ほらね。詩織は家に居ましょうね」

「千秋先生、どこで何をする予定なの?」

「病院で患者の手を繋いでもらって、気づいたことを言ってもらう」

「その患者は感染症か何かで、うつるとか?」

「感染症の患者はいない」

「じゃ、何が危険なの?」


 千秋先生は少し逡巡したが、口を開いた。

「昨日、神木君の映像を見ただろ? 詩織の手を繋いだ後、彼は亡くなったんだ」

「じゃ、私と手を繋ぐと死ぬってこと? お父さん、お母さん、香織お姉ちゃん、沙織お姉ちゃん、お手伝いさんのカンナさん、トレーナーの山田さんと手を繋いでいるよ。あと、犬のバイスちゃんもだね。死んでないじゃん」


「相手が死ぬだけじゃなく、詩織がまた意識不明になるかもしれないし、危険だよ」

「じゃ、これから手を繋ぐことを気にしながら、生きていく必要があるの? そんなの嫌だよ。デートもできないじゃん」


 千秋先生は少し考えて、「まず、私と実験しよう。詩織と私に微弱な電流と磁場を計測できる機器と心拍を測る機器をつけて、手を握る実験をしよう」と提案した。

「千秋先生、それで何がわかるんですか?」

「多分何もわからないだろうね。神木くんが行なっていた実験でつけていた計測器は、いつも微弱な電流を計測していたからね。でも心拍の同期はわかるかな」


「香織お姉ちゃん、千秋先生の提案でいいんじゃない? 手を繋がずに生活なんてできないし…」

「わかったわ」


「じゃ、計測機器を持って来させる」と言って携帯で連絡を始めた。

「すぐに来るけど、お茶を飲む時間はあるだろう」


 お茶を飲んでいる間にセッティングが終了したらしいので、部屋に入った。

「河野さん、よろしくお願いします」

「あれ? どうして? 初めましてだよね?」

「え? 初めまして?」

「詩織、明人君とは初対面だろ? さっきの携帯での会話が聞こえたのか? いや、私は明人君のことを河野とは呼んでいない。いつ知った?」


「えーっと。わかんない。だって河野さんだって思ったから… それって重要なこと?」

「そう。重要。神木君が明人君のことを『河野さん』と呼んでいたからだ」

「重要?だって、苗字で呼ぶのって普通じゃない? 本当に前に会っていたかもしれないじゃん」

「ふむ。詩織と明人君が確実に会っていないとは、言えないな」

「千秋先生が、神木さんと私は会っていないと明言したのに、河野さんとは会っていないと明言できないの?」

「明人君は仕事で私の病院にもよく出入りするから、会っている可能性は否定できない」


 千秋先生が眉間を押さえて考えている…

「千秋先生?」

「そう、それだ… 最初の疑いは『千秋先生』だ。今までの呼び方は『桃華先生』か『桃華ちゃん』だった」

「香織お姉ちゃんも『桃華ちゃん」から『千秋先生』に呼び方が変わったよね?」

「千秋先生が私の家庭教師になった時に、呼び方を変えるようにと言われたからね」


「神木君も私のことを『千秋先生』と呼ぶ」

「えーー。『千秋先生』って呼ぶのは普通だよ。だって、白衣を着ているから自然じゃない?」


「詩織は英語キーボードのMacを使い始めたよな。神木君の端末はMacの英語キーボードを指定したそうだ。それに、さっきの明人君のことを『河野さん』と呼んだことだ。詩織は神木君の記憶を引き継いだと考えられないか?」


「どれも大したことない変化でしょ? 私も19歳になったし、大学生になったし、他にも色々変わっているわ!」

「詩織、19歳になったのか… そうか大学生か… そう見えないから忘れていた」

「えーー! どこからどう見ても女子大生でしょ!」

「詩織と明人君が歩いていたら、通報したくなるから、違うな」

「私はSPに対処させるわ」

「千秋先生も香織さんもひどいですよ…」


 香織お姉ちゃんは真顔に戻って、「…神木さんって、毎日トレーニングしていたよね? 運動嫌いの詩織が運動するようになったよね?」と言った。

「トレーニングは落ちた筋力を戻すために強制されたでしょ。それが習慣になっただけ!」


「それも入れると4つか… 状況証拠で確定とは言えないね。何か方法がないか考える。とりあえず今日の病院での検証はキャンセルだ」

「よかった」と香織お姉ちゃんが微笑んだ。


「方法をこれから考えるから、明日も9時にくるよ」

「明日もですかー? わかりました…」


「明人君、戻ったら調べて欲しいことがある。帰るぞ」

「わかりました」と慌ただしく、千秋先生と河野さんが帰った。

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