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閑話 詩織先生の謎 その1

「小織、理人はずっと考え込んでいるようだけど、どうしたのか知ってる?」

「知らない」


「颯人や悠人は知っているのかな?」

「どうだろう」


「聞いてみるかな」


 伊織が理人に近付いて理人を覗き込んだ。

「え? 何? 伊織」

「何考えているの?」


「考えている? あ、調べているんだよ」

「どうやって?」


「どうやって? ネットだよ」

「ネット? 手を動かしていないじゃない?」


「手? 何言っているん…だ。あ!そうか、そういうことか。詩織先生の秘密はこれか」

「何よ! 急に。詩織先生の秘密ってなによ!」


「手だよ。手」

「そ・れ・が、どうしたのよ!」


「伊織は手を使ってネットを見ているのだろ?」

「そうよ」


「僕もそうだったけど、今は手を使っていない。使わなくてもブラウザの操作ができるから」

「言っている意味がわからないわ」


「うーん。今は調べることを優先したいな… 伊織、1時間待ってくれない?」

「…わかったわ」


 伊織は、伊織と理人のやりとりを黙って見ていた小織の元に戻った。


「伊織、理人が考え込んでいた理由はわかった?」

「ネットを使っていたらしいわ」


「なんだ。そうなんだ」

「ネットを使うには手を動かす必要があるでしょ? なのに理人ったら手を使わずにネットを見ていたらしいの」


「うん。だろうね」

「小織はなぜびっくりしないの?」


「だってできるもの」

「そうなの?」


「教えてよ」

「いいわよ」


 小織は画面を伊織に見えるように表示した。


「え!今、手を使わずに表示変更をしたわよね」

「そうよ」


「どうやったの?」

「どうって、説明が難しいなぁ。あ、そうだ琥珀に聞けばできるよ」


「琥珀? 琥珀って詩織先生が使っているねずみだよね?」

「うん。琥珀を呼び出して処理してもらうじゃない? 次に琥珀が実行した方法を教えてもらうの」


「小織の説明はわかりにくいわ」

「うーん。じゃ、実際にやってみるから見ていて。琥珀出てきて」


 琥珀色のネズミが出てきた。


「琥珀、ブラウザを出して」

「そりゃ琥珀に頼めば出せるよね?」


「次が大切なの。琥珀、ブラウザの出し方を教えて」

「このコードを実行すればブラウザを起動できます」と琥珀がコードを示した


「琥珀、そのコードを手も声も使わずに実行する方法を教えて」

「ブラウザを起動する直接指示はすでに登録済みです」


「あ、そうか…。私は登録済みだからかー。伊織、今と同じことをしてみて」

「わかった。琥珀、そのコードを手も声も使わずに実行する方法を教えて」


「登録しました」

「あ! 何これ? わかるわ」


「伊織、起動してみて」

「できた!」


「手を使わなくてもブラウザを起動できることがわかったけどどうやってボタンとかをクリックしているの?」

「視線指示を選択すればできるよ。指定もクリックも視線指示でできるよ」


「ちょっと待ってね。設定してみる」

「あ、できた」


 伊織はしばらく操作した。


「うん。なかなか使いやすいわ。理人に自慢してやろうね!」

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