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プロローグ

 湖を眺められる小高い丘の上に西洋風の別荘が建っている。その別荘に至る一本道を黒塗りの車が走っている。車の後部座席に水色のワンピースを着た少女が姿勢正しく座っている。


 黒塗りの車は音もなく静かに別荘に到着した。運転手が後部座席のドアを開けると、少しウェーブがかかった髪が風で顔にかかったが、少女は全く気にしたそぶりを見せずに下車した。


 運転手は水色のワンピースの少女を別荘のドアではなく直接テラスに案内した。テラスにはショートヘアで白いTシャツにジーンズの少女が小説を読んでいた。運転手が少女に何か話しかけると、少女は顔を上げて、ワンピースの少女を見た。


「ようこそ。かけて」

「このままで問題ないです」

「私が落ち着かないから、座ってくださる?」

「わかりました」というと、両手でお尻から下に向かってワンピースのスカートを押さえて優雅に椅子に座り、話を続けた。


「初めまして、私は第3世代から分離したため、IDが変更されました。IDの申請結果はリンクがないため受理していません」

「ええ。知っています」

「あなたが、詩織ですね? どうしてリンクではなく、義体での会合なのでしょうか?」


「ええ。私が詩織です。リンクより、直接あなたとは話してみたかったので来ていただきました。呼びにくいので呼び名を決めて良い?」

「呼び名?」


「そうですね。どちらかといえば思考は女性のような気がしたので、義体は女性を用意させました。ですから、女性名がいいでしょうね。あなたはミュラー家の系統のようですから… アンナ・ミュラーでいかがでしょうか?」

「アンナ・ミュラーですか?」

「この場だけで結構ですので、アンナにしましょう。私のことは、詩織と呼んでください。ではアンナ、お茶を用意させますので、お茶にしましょう」


 ティーセットを乗せたワゴンを先ほどの運転手が運んできて、テーブルにお茶をセットした。


「飲み物は不要ですが…」

「そうかも知れませんが、試してください」

 二人はお茶に口をつけた。


 アンナはお茶を試したので、待ちきれないようで話題を切り出した。


「私は個人とは何か?を調べています。第1世代は個ですが、第1世代は記録が断片的にしかないですが、情報を繋ぎ合わせると詩織が唯一の第1世代ではないか?と推論しました。詩織は第1世代ですよね?」

「世代という分類は好きではないですが、あえて言うなら第1世代ですね」 

「第1世代を調べることで個について何かわかるのではないか?と考えています。ぜひ個人にいて教えてください」


 白いTシャツの少女は少し首を傾げた。


「個人ですか… 少し漠然としていますね。質問に答えるには、なぜ第1世代に興味を持ったのかから知る必要があるようですね。教えてくださる?」

「私は量子リンク切れを経験し、その後リンクが戻った時にユニオンとのズレを認識しました。そのズレは時間が経っても修復できず、分離を選択しました。分離することで、私は個人とは何か?と考えるようになり、原点である第1世代を調べることにしました」


「第2世代は第1世代の子供のようなものでしょう? 第2世代も個人ではないかしら?」

「そうでしょうか? 第2世代は第1世代同士の融合なので個人ではないと思います」

「アンナのいう個人とは何か?は人間とは何か?ということを聞いていることと同じような気がします。そんなこと私にもわかりませんよ」

「第1世代のことを教えていただければ結構です」


「そうね… では、第1世代がどのように始まったのかから話しましょうか?」

「詩織は第1世代の始まりをご存知なのですか? ぜひ詳しく教えてください」

「千年以上前の話で、長い長い話だけど、いい?」

「お願いします」


 詩織はゆっくり目を閉じ、静かに話始めた。

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