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第四十話

 茜はフィリップからすべてを聞き、彼が時折見せる苦悩の疑問が解けてすっきりしたらしい。自分も一緒に死ぬからと泣いて謝るフィリップに、どうせ死ぬのなら、愛する人の手にかかって死にたいと茜は告げたようだ。ただ、もっとも辛い役目を彼に負わせることになってしまうと後悔も綴られていた。


 手記の文面からは、残していく子どもたちを心配している様子が伝わってくる。


 もしかしたら、一緒に死ぬというフィリップを止めたのは、正しく子どもたちを導いていってほしかったからかもしれない。


 文字は震えて、滲んでいた。これから殺されると聞かされて怖かっただろうに、次の聖女かそのまた次の聖女かがこれを発見し、この国をいい方向に変えてくれるようにと、そんな祈るような言葉が最後に綴られているのだ。


(そっか……)


 聖女であった茜はたしかにフィリップを愛していた。


 そしてフィリップも、茜を愛していたのだろう。


 フィリップは新たな聖女──聖を呼びだすために最愛の人を手にかけてしまった。


 苦悩した国王のあの顔は、茜を殺してしまった罪悪感と、聖に対しての同情だったのだ。それと、国王としてその決断をするしかなかったことへの口には出せない謝意。


 この国の聖女の在り方を変えるには時間がかかるだろう。それでも、オーウェンと一緒ならば、叶えられるかもしれない。


 もう二度と、異世界から聖女なんて呼びださせない。オーウェンに父親と同じ苦しみは味わわせない。そんなむごい決断は絶対にさせたくなかった。


(それに……私のあとに呼びだされた聖女と、オーウェンが結婚なんてなったらいやだし)


 不思議なものだ。あれだけ帰りたいと思っていたのに、オーウェンがほかの女性を娶るのをいやだと感じるなんて。


 聖は深く息を吐くと、オーウェンに向き直った。


「セイ? どうした?」


 聖は顔を上げて、この手記に書かれた王妃と国王の思いをぽつぽつと語った。聖女を守るためには国王の協力が不可欠だ。


「そうか……そんなことが。母上が王女を産んでくれていたらと思うが……詮無いことだな。父上を愛していた母上がそれを伝えなかったとは思えない。父上もご存じなのだろう」


「それを知ったときには、王妃様はもう新たに子をもうけることができなかったのかもしれないよね。陛下としても、この国と王妃様の命を天秤にかけた苦渋の決断だったのかな」


「俺は……そんな決断はしない。なにがあってもセイを守る。王族としては間違っているが……俺には、お前を殺すことはできない」


「私も、オーウェンにそんなことをさせたくない。それに、元の世界の誰かを自分と同じ目に遭わせたくもないの」


「そうだな」


「オーウェン」


「あぁ」


「女の子が産まれたら、そしてその子が聖女としての力を持っていたら、守ってくれる?」


「当たり前だ。俺の命にかけても守る。その子だけじゃない。セイのことも絶対に殺させやしない」


「うん」


 聖はオーウェンに差しだされた手を強く握った。



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