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第三十八話

 目が覚めると、聖は寝室に一人だった。


 ここは城の自室ではない。


(あれ、私……)


 町に着き、怪我をしたオーウェンをみんなで部屋に運んだのだが、そのあとの記憶がない。気が抜けてそのまま眠ってしまったのかもしれない。


(そうだ! オーウェンは!?)


 いつもなら隣に寝ているはずの彼の姿がない。いやな予感がしてベッドから飛び降りると、物音で気づいたのか誰かが扉をノックする。


「セイ様! お加減は!?」


 この大きな声はディーナのものだ。


 聖は扉を自分で開けると、安堵したようなディーナの顔を見て、オーウェンが大事には至っていないと判断する。


「ディーナ、オーウェンは?」


「大丈夫です。まだ眠ってますけど、命に別状はないそうです」


 聖が倒れた後、代官がすぐに医師を手配してくれたようだ。聖は深く息を吐きながら、胸を撫で下ろした。


「オーウェンのところに案内して」


「わかりました」


 ディーナの案内で一階に下りた。出血がひどかったため、あまり動かすことができず、オーウェンを一階の客室で寝かせていたのだ。


 ベッドに寝かされたオーウェンは苦しいのか眉間にしわを寄せ、荒い息を吐きだした。


「う……っ、あ」


 聖はうなされている様子のオーウェンに駆け寄ると、シーツの中にある手を取り、強く握った。


「オーウェン……また、守ってもらっちゃったね。今度は私が、あなたの役に立ちたいって思ったのに」


 聖が呟くと、唸るような声が聞こえて、微かに名前を呼ばれる。


「セ、イ?」


「……っ、目が覚めた?」


 オーウェンは聖が握った手に力を込めると、小さく頷いた。


「セイに、怪我、は?」


「ないよ」


「そうか、よかった」


 心底安堵したような顔を受けられて、胸が詰まる。


「私の心配なんて、しなくていい。前聖女様みたいに、回復魔法が使えたらいいのに」


 そうしたら、すぐに治してあげられたはずだ。あの夜、彼の身体を見たとき、背中や脇腹に無数の傷痕があった。聖がこの世界に来る前についた傷もあるだろうが、彼がいつもどれだけ危険な任務を熟していたのかと考えてぞっとしたのだ。


(やっぱり私はいつも、守ってもらってばかり)


 優しいこの人が苦しい思いをするのはいやだ。


 彼の苦しみを取り去りたい。祈りながら手を握り続けても、彼の傷は治らない。


「回復魔法なんて、必要ない。すぐ治る。だから……泣くな」


 オーウェンは手の甲で聖の頬を拭った。


 聖は瘴気を祓えるだけで怪我を治す力はない。もし今どこかでまた瘴気の発生が確認されたら、オーウェンは聖を守るために怪我を押してでも動こうとするだろう。


 この世界に来てから聖はかすり傷一つ負っていない。それはオーウェンを始めとした聖女部隊の護衛が常に守ってくれているからだ。


「もっとちゃんと勉強する。魔法のことも、聖女のことも。だから、早くよくなって」


 大事な人がこれ以上傷つけられないように。聖ももっと努力をしなければ。いつまでも彼の後ろにばかり立っていられない。


(聖魔法のこと、もっとなにかわからないかな)



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