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雨降りの映画館 (四五)
オレが不器用に人参を握って皮をなんとか切ろうとすると、香里ちゃんはオレから人参を奪ってスライサーで手際良く皮を剥きとった。ササッと皮を取ってしまうと人参を手渡された。
「洗って。」
なんだ、切ってくれる訳じゃないのか。
ペーパーキッチンを出された。
「拭いて。」
オレはていねいに人参を拭いた。オヤジも立ち上がってキッチンへやって来た。
「私も…手伝います。」
「ジャガイモ洗って。」
「はい。」
「狭いなぁ。」
香里ちゃんはオレのまな板を取り上げて背中合わせのテーブルの隅に置いた。
「こっちでやってよ。」
オヤジはジャガイモを洗い、スライサーで皮を剥こうとした。
「待って。」
香里ちゃんが割り込んだ。
「ほら。まずはこうやって芽を取って。」
「はい。」
オジサンは炒め物を始めた。
「雨止んだしな。」
オジサンはポツリと独り言も言ってた。




