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雨は降る  作者: 坂本瞳子
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雨降りの映画館 (四四)

ずぶ濡れになった階段は歩きにくかったけれど、なんとか二階の扉の前に立つと、オジサンは口の前に人差し指を立ててオレの方を向いて、耳を扉に押し当てた。そんなことしなくても中からは楽しそうな笑い声が混じった会話が聞こえてきた。内容までは聞き取れなかったけど。オジサンもふふふと笑った。そして突然ガッと扉を開けた。案の定、中の会話は止まった。

「もうッ!歩き飲みしないでって、なんど言ったら分かるの?」

「はいはい。腹が減ると怒りたくもなるよなぁ、香里ぃ〜。」

「もうッ!」

中からは味噌汁のいい匂いがした。小さなキッチンテーブルは片付けられ、いかにもありあわせ、不揃いの茶碗やお皿、お箸やスプーンやフォークがとりあえず並べられてた。

「じゃ、テレビでも見てて。」

香里ちゃんは奥の部屋へ行ってテレビを付けた。オジサンはオレが抱えたままの袋から必要な食材を取り出し、残りは冷蔵庫に入れるようにオヤジに指示をした。

「乱切りでいいよ、マサルくん。」

…オレに人参を切れというのだった。


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