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雨降りの映画館 (四三)
オジサンは慣れているのかテキパキと買い物を進めた。薄汚い格好からはちょっと想像できないくらいだった。肉のコーナーに来ると牛肉と豚肉のパックを一つずつ取ってオレに見せた。
「カレーといえばチキンだろ?」
「…はぁ。」
どう答えるのが正解か分からなかった。オジサンはちょっとイラッとした顔付きをした。
「どっち?」
「…ボクは、…ポークがすきです。」
オジサンは目を見張るようにまあるくした。そして二つのパックを元に戻して、高級そうな牛肉のパックを手にした。
こういうことが前にも、遠い昔にもあったような気がしたけれど、思い出そうとしてもオジサンはズンズンと買い物を続けて進んで行ってしまう。野菜やら飲み物やら結構な分量を買った。レジでは「え?」と思うような合計金額だったけれど、オジサンは平然とポケットの中から皺くちゃの一万円札を出して丁寧に拡げてから私、お釣りを受け取るとそれを無造作にポケットに突っ込んだ。そして大きい方の袋ばかり二つともをオレに持たせて歩き始めた。結構重かった。オジサンは小さい方の袋、しかも片手にビール缶を開けて飲みながらオレの前を歩いた。
雨はもうほとんど降っていなかった。




