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雨降りの映画館 (三九)
オジサンは香里ちゃんの肩を前後にガクガクと大きく揺らして、立ち直らせてこう言った。
「しっかりしろ、香里!大丈夫だから。オレ、ちゃんとココにいてやるから!」
香里ちゃんはしばらく呆然としていた。
やっと、雨の音が聞こえた。ああ、まだ振り続けているんだとオレは認識した。
香里ちゃんも、やっと我を取り戻したのか、オジサンをしっかりとと言うよりはボンヤリと見つめ、それから小さく頷いた。オジサンは台所へ行って蛇口を廻すと手を洗い、流しの横にかけてあったタオルで手を拭いた。うちの親父にもオレにも目を合わさず、タンスの上の小さな祭壇の前に立った。お線香をあげてお鈴を鳴らして手を合わせていた。うちの親父と同じようにぶつぶつなんか言うんだなって、なんとなく見ていた。香里ちゃんと目を合わすのが怖くって、オジサンを見ていた。
オジサンは、ミキの写真の後ろに据えてあった写真立てを前に出した。それはミキと同じような顔したカワイイ顔した女性が映っていた。…ミキの母親だろう、間違いなく。オジサンはこの写真にも手を合わせてしばらくぶつぶつと言い続けていた。




