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土砂降りの駅前(一六)
玄関が閉じられると、私はキッチンに戻った。ビニール袋の中からプラスチックの丼ぶりやらを取り出した。この間にも洋一は話しかけてきた。
「で、真弓は?」
私はうんうんと頷きながらも、割り箸を差し出したり、カップの味噌汁に湯を注いだりした。
「だから、ウチには一人で来たよ。」
「なんか話した?」
「他愛もない話だ。」
「なんだよ、それ。」
「…そら、そこのスーパーは割と良い品置いてるとか、なにそれが安いとか。」
「そんなこと聞いてないだろ。」
「ほら、食べよう。カツ丼、食いたかったんだろ。」
「…いただきます。」
洋一もズバリと聞きたいことを聞く勇気はなかったようだ。安野屋の天丼は、味は変わらずおいしかった。
雨はまだ降っていて、弱まる様子はないように思われた。




