86/125
土砂降りの駅前(一四)
「で、真弓はいつ?」
私が受話器を置いてテーブルに着くや否や洋一は私に聞いた。私は息子をじらしたかったんだろうか。まずはゆっくりとお茶を一口飲んだ。洋一が私が話し始めるのを待っているのが分かる。
「もう、三週間くらい前になるか。」
「ひとりだったか?」
「ああ、ひとりだった…と思う。誰か一緒のはずだったのか?」
「いや、分からんから聞いてる。」
「分からんてなんだ。オレはお前が一緒だと思ってたんだ。」
「なんだよ、それ。」
「いや、ほら、えーと…、ほら、スーパー!駅前のスーパーでたまたま偶然会ったんだよ、真弓さんに!一人だったから、お前と一緒なんだろうと思いこんでたんだよ。」
「なんだよそれ。」
「いや、そしたら、真弓さんはお前は仕事で少し遅くなるって言ったからだなぁ…。」
「なんでそのときすぐオレに電話しなかったんだよ。」
「お前こそ。何年電話してこなかったんだ!」
ここで話が途切れた。絶妙のタイミングでインターフォンが鳴った。安野屋さんに違いない。私は急いで玄関口に向かい、雨が降りしきる外へ向かって扉を開いた。




