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校庭に降る雨 (三)
で、夏目さんも雨に打たれる校庭を見てるんだよな。穴が空くほどの視線を向けてる。
ま、迫田さんの朗読はそろそろ終わりにしたい。
「じゃ、漢字テスト、やります。」
「え゛ーッ?」
気持ちイイくらい、みんなの声が揃う。
「ちっ、夏目がくるからだよ。」
聞こえるくらいの声でいうのは中田さん。ほかの皆はなにもいわないっていうか、ボクが言わせない。
「はい、教科書しまってー。」
小さめのテスト用紙を一番前の席の子たちに配る。
「せめて五問ずつにしてよー。」
ムシムシ。ボクはまず漢字を書き始める。五問にしとく。教科書見ながら書くもんねー。それから五問。平仮名で書く。黒板に。おっきい白い文字で。皆には漢字で書いてもらう。
外はまだ雨。よく降ってる。夏目さんは机の上に置かれた用紙に目もくれず、ずっと外を、校庭を打つ雨を見たままでいる。