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雨降りの映画館 (三三)
それは見慣れない住所で、オレはどこなんだかよく分からなかった。外はまだ雨が降っていた。ここ何日も、雨が降ってない日はないんじゃないかってくらい、よく雨が続いてた。
二〇分くらいだったろうか、タクシーは到着した。タクシーから出てきたオヤジは二本持ってたビニール傘の一本を拡げるとオレの右肩にかけた。そしてもう一本も拡げると自分の右手でしっかりと握ってオレを見下すように眺めてから歩き始めた。
「さびれた町」っつーのが適当だろうか。華やかさはない町だった。アパートがあった。オヤジは自信なさそうにキョロキョロして、番地の表示と左手に握ったままのメモ用紙とを見比べていた。
こじんまりしたアパート。二階につながるむき出しの階段を上がって二軒先の扉の前に立つと、オレを手招きして呼び寄せ、すぐ横に立たせた。古びれた玄関の扉に表札はついてなかった。オヤジにしては若干控えめと思えるような強さでドアをノックした。




