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雨降りの映画館 (三二)
やっと会計が終わって、オレはオヤジの三歩くらい後ろをついて行った。その有無を言わさぬ表情に、そうするしかなかった。
ガラス張りの自動ドアが開くと、オヤジはタクシー乗り場を目指して歩いているのが分かった。乗り場に待ち合いの人の姿はなく、すぐにタクシーに乗り込んだ。
「いいよ。」
オレは開かれたドアから中に向かって言った。
「そうじゃない。」
オヤジはオレの方を見ることもなく、そう言った。仕方なくオレも乗り込むと、まるで刑務所の柵が降りるような響きを立ててタクシーのドアは無情にも閉められた。
オレが座席に居直るとオヤジは右腕にオレの荷物を抱えたまま、左手で上着のポケットからメモを取り出し、前のめりになってそれを運転手に示した。折り畳まれていたメモを丁寧に伸ばして、運転手はカーナビにその住所を入力していた。




