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雨は降る  作者: 坂本瞳子
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雨降りの映画館 (三一)

いま正に退院せんと部屋を出て行こうとしたところ、親父が入って来た。歳取った身体に疲れた顔を乗せたその男は、文句を言うつもりさえなさそうだった。世話焼きの若い看護婦は、また気を利かせてやったんだといった風な得意顔をして、父を案内すると早々に出て行った。雨のせいでナースサンダルが鳴らすキュッキュッという音がやけに耳障りだった。

入院中に買っ(てもらっ)たタオルやTシャツなんかを詰めたエコバッグをオヤジはオレから奪った。ものも言わず病室出て行くこの男についていくしかないらしかった。


病院のロビーでこの男と、ひと一人分を空けてベンチに座って会計処理を待つのは永遠と思われるくらい長かった。そしてそれは母のための空席でないことは確かで、なんとなくため息を吐くことさえためらわれるのだった。

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