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土砂降りの駅前(五)
湯船につかると気持ちが休まる。窓の向こうでは強い雨の音がまだ聞こえている。
自分が風呂に入っている間に、家に誰か人がいるというのは久しぶりのことで、なんだか不思議な感覚だ。いつもはゆったりするけれど、なんだか落ち着かなくってすぐに出てしまった。まさにカラスの行水というほどの短さだった。
パジャマを着てドライヤーで髪を乾かして、洗面所の鏡に見入って、そして考えた。
いいんだろうか、パジャマで。いいんだよな、義理の娘、息子の嫁なんだもの。家で風呂に入ったあとは当然パジャマだよな。そんなことがあんまり久しぶりで、なんだか考えてしまった。
キッチンに向かうと真弓さんの姿がなかった。
なんとなく、あっちの部屋やこっちの部屋を見廻したけれど姿がなかった。
玄関に行ってみたら、真弓さんの靴はあった。なんだか見慣れない、履き古されてはいるけれど、でもキレイに手入れされた、女性用の小さい靴だ。
「真弓さん?」
少し大き目の声を出してみた。
「あ、はい。」
慌てたように、真弓さんは二階から降りてきてくれた。




