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土砂降りの駅前(三)
私は値引きシールが貼られた一切れのアップルパイを取ろうとしたところ、横から別の手に遮られた。それは、若い女性の手だった。なんの気なしにその女性の顔を見た。
「お義父さん!」
「…真弓さん。」
それは、息子の嫁だった。赴任した九州で息子と一緒に暮らしている義理の娘がそこにいた。
「洋一は?」
「あぁ、えーと、洋一さんは…ちょっとまだ、会社の人と…。」
「まさか、真弓さん、この土砂降りの中ウチに入れなかったらココへ?」
「え…、えぇ、まぁ、…そんなところです。」
「それはそれは申し訳なかったね。じゃあ、さっそくウチへ行こう。あぁ、ちょうどいいね、三人分の食材買っていこう。せっかくだから三人ですき焼きとでもいこうじゃないか。ねぇ。」
「あ…、はい。」




