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雨降りの映画館 (二七)
病院て、ヒマだ。
寝てるだけなんだけど、疲れる。
院内を出歩くと、怒られる。
外は雨。
渡り廊下にたどり着く。中庭が見える。小雨のベンチに座ってる女の人がいる。傘で顔が見えない。赤い傘。あれ、香里ちゃんだ。こっち向いた。目が合った。
ときが止まった。
そんな気がした。香里ちゃんは駆け寄って来ない。周りに人はいない。
一、二、三、四、五。
立ち上がってもくれない。
看護師がやって来る。
「周防さん、部屋に戻りましょう。」
腕を取られる。一歩歩みを取る。
香里ちゃんはまだ立ち上がってくれない。
オレは看護師に引っ張られて、二歩、三歩と進む。香里ちゃんは確かにオレのことを見てるのに、立ち上がってもくれない。




