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チャレンジ

サイコロの目は5。よしっ。国士無双だ!

終戦から10年たった昭和30年1月。街に戦争の面影を残すものは、見当たらない。


「ポン。」


私が切った西を、対面のメガネがポンした。


ここは、街の小さな麻雀店『明治蛭子常盤座』。 店は、人であふれている。


6巡の間、有効な牌が、巡って来ない。


「ツモっ。」


あっという間に、西家のメガネが、あがってしまった。


 ― くそっ。上手くいかねぇ


私の親権が下家にうつる。


後ろで、ちょび髭が、ハハハと笑った。


「ついてないねぇ。良い手だったのに。」


 ― 見ねぇ顔だ。どこの素人だ。


観戦者が、勝負に口出しするのは、マナー違反。店主が、ちょび髭の肩を叩き首を振る。


「いけねっ。すまないね。」


男は、ぺろりと舌を出した。


ちょび髭のつまらない口出しが、アヤとなったのか、その後も私の手はつかず、あがれない。


2度目の親が回ってきた。ここが勝負どころだ。私は、下家の長髪にサインを出した。


 ― 積み込みだっ。


下家の長髪こそ、私の仲間…相方である。私は、慎重に、しかし素早く牌山を積む。そして、長髪がニヤリと笑い、親指を立てた。


 ― よし、相方も思い通りに牌の並びを操作できたようだ。後は、私がサイコロを転がすだけだ。


必要な目は『5』。


軽く指を舐め、2個のサイコロをつまむ。1と4の目を上にして、縦に1回転だけ転がるよう投げる。力を入れてはいけない。布を撫でるように、そっと転がすのだ。


サイが転がる。


 …1 …4っ。


よしっ。『5』の目が出た。予定通りの進行に胸をなでおろす。配られる牌は、私が並びを操作した牌山と、下家の長髪が並べた牌山から取ることになった。もちろん、結果は、あなたが想像する通りだ。


 ― 国士無双っ。


191919東西南北白発中…そして東。誰も何もすることのできない、親の役満の出来上がりである。


その時であった。ちょび髭が声をかけてきた。


「はーい。そこまでっ。」


 ― この野郎。また邪魔をしやがるかっ。


ガッと振り向こうとすると、肩を強く押さえられた。


「はいっ。みんな動かないでくださいね。」


ちょび髭の、左手にあったのは、警察手帳…。店の扉が、大きく開かれ、私服の警察官たちが踏み込んでくる。


「みなさん。単純賭博の現行犯になります。

 あっ、マスターは、開帳罪つくかもしれないから別ね。

 そこっ、動いちゃダメだよ。罪が重くなるよ。」


 ― 嘘だろっ。こんな小さな店に警察が…。


「ついてないねぇ。良い手だったのに。」


肩を落とす私の背中を、ちょび髭が、ポポンっと軽く叩いた。

文字数(空白・改行含まない):1000字

こちらは『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』用、超短編小説です。

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