表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/586

予測と対策

 ❖ ❖ ❖ ❖

 本家の慌てぶりは由良の想定外であった。


 そして双子の着地ポイントは、一族が集まっていた大広間のど真ん中だったのだ。

「おい、ちっとは上達しろよ」

 由良はそう呟くと、高座に向かい一礼すると静かに座り頭を垂れる。


「雨辻由良、ただいま戻りました」

 双子も後に続く。


「それで! さきほどのフェロモンからしてやはり花嫁だったんじゃな」

「それで捕獲してきたのだな」

 周りからは口々に質問の嵐である。


(報告しただろうが……)

 とイライラしながら頭を上げると「現在は保護下にいます」と説明した。


 その言葉に周りの大人は騒めき立つ。

 その後は「何をやっているんだ!」と罵詈罵倒の嵐だった。



「由良よ……抜かりないのだな……」

 高座の御簾の向こうからの声で、大人たちは一斉に黙る。



「はい、花嫁の『内側』から結界を仕掛けました。易々と破られるものではありません」

「今度の花嫁は何かが違う様子……気を抜かぬよう」

 その言葉を最後に、高座から気配が消える。



 大人の罵詈罵倒が続くことは予測できたので、それと同時に由良もその場から「逃走」した。




「あれ? どこ行ってたの?」

 自分の席に座っている由良に気づき、琥珀は声を掛ける。


 声を掛けて……今朝のことを思い出し真っ赤になってしまった。

 その姿がなんだか「可愛らしく」てクスッと笑ってしまう由良がいる。


「そんなに良かったのか?」

 ニヤリと笑いながら由良が突いた。

「な! ちょっと! バカにするのもいい加減にして!」

 琥珀はもう羞恥心なのか何なのか分らず、涙目になって怒っている。


 その日一日、二人は考えている方向性は違えども、内容は今朝のことについてだった。




 パンッ!

 また何者かが「侵入」した気配がする。

 由良は苦笑してしまった。今朝のことを少し楽観視していただろうか……と。


 もう異能者各々の目的地はセットされてしまっているようである。続々と「侵入」してくる猛者共にどう対抗するか。


 その中で数名はいとも簡単に侵入していた。自分と同等か……またはそれ以上か。

 あーもうめんどくさい、というのが正直なところである。

 いっそ一族の本家へ父親ごと連れ帰ってしまえばいいのではないか……と考えていた。それなら約束を違えたことにはならない。


 しかしそれは無理だと分かっていた。「出生場所」でしか行えないからだ。


 それかさっさと「成人の儀」を終わらせて連れて帰るか。


 いや……そう簡単にはいかないことは由良も分かっていた。琥珀という存在が知れ渡ってしまっては「成人の儀」には争奪戦参加者が一堂に会することとなるはずである。全員がスタートの合図を舌なめずりして見守るであろう。


(えげつないな……って俺もその一人か)

 由良はまた苦笑する。


 どうしようもない、これは輪廻に仕組まれたゲーム。


(今は俺がすべきは、「成人の儀」を延ばすこと……いや、既に無理な気がしてきた)

 これから侵入してきた異能者とは対峙するであろう。「成人の儀」は満月に行われる。「俺はこの猛者共を蹴散らせるのか」と不安が過る。


「やるしかないのかぁ」

「え? なんかやるの?」

 そこは茶の間だった。座卓に俯せて考え事をしていた時に、独り言となっていたみたいである。

 そこにできた夕食を運んできた琥珀が反応したのだ。


「いや、めんどくさいと思って」

 琥珀は「はぁ?」という顔で覗き込んでいた。琥珀の中では今朝のことは「揶揄われた」ということで処理してしまっていたので、琥珀は夕方には立ち直っていた。


「いっそさぁーお前のそのリング解放させてさぁ。奴らを自分で蹴散らしたらいいんじゃね?」

 弱気からついついそんな「楽な方向性」を模索してしまう。

「はぁ? ますますわかんないんだけど」


 琥珀はどうやら今朝のトランス状態は覚えていない様子であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ