成長
琥珀が居ない間に話は進んでしまっていたらしい。
琥珀にはよく分からなかったので、気にすることもなく帰り際に「もう少し転移の練習して帰りましょうか」と楓が部屋の家具を『移動』させた。
作ったスペースに手を翳す。いつも見る様な魔法陣が浮かび上がってきた。
「一応道筋を作りました。この上なら軸がずれることもない。あとは『転移』してみてください」
そう言われて、一応帰る境内はイメージする。
そして目を閉じてイメージした瞬間、いつもの空間が歪む感覚で、目を開けると……。
「おおっ! 戻っている」
と感動していた。
葉月は肩に乗って「まあまあだな」という感想を述べている。
時間差で、椛が境内に移動してきた。境内で目を細め何かを探る。
「やはりそうなのか……厄介だな」
と呟く。
時間は夕方を過ぎ、夕焼けも暗く影を差しつつある時間帯となっていた。
「椛さん、私お散歩してもいいですか?」
琥珀の恒例行事である。散歩という名の「探索」であった。
「好きにしたらいい」
その返答で、琥珀は葉月と走り出した。
「どこも造りって似ているものね」
中庭の側路を歩きながら琥珀は葉月と屋敷を一周していた。そして皮肉めいて琥珀が葉月に感想を述べる。
「できればここでは静かに期間まで過ごしたい」
と希望も付け加えた。
「そういえば、ノアのダメージはもういいのか?」
葉月が琥珀を労わるように尋ねる。葉月よりも琥珀の傷の方が酷かったのは葉月も知るところであった。
「もう大丈夫、その分だいぶ寝たけどね……」
琥珀は思い出したくもない、という風に頭を抱え込む。
しかし、直ぐに葉月に向かって苦笑しながらガッツポーズをしてみせた。