双子の兄
琥珀はこの場所を知らない。琥珀の予想ではたぶん藤堂家なのは推測できる。
「すみません、ここはどこですか?」
まずは場所の把握から行うことにした。
「あぁ、説明が遅くてゴメンね。オレは藤堂楓。よろしく」
(とりあえず藤堂家の誰かね……)
その挨拶で琥珀はという認識ができた。
「京琥珀です。よろしくお願いします」
と琥珀は自分を名乗り、握手を交わす。その時、部屋の中にノック音が響いた。入ってきたのは、藤堂椛である。
(似ているんだけど……何かが違う。兄弟?)
琥珀は二人を無意識でガン見してしまっていた。それに気づいて楓が爆笑してしまう。
「あーそうか、似たようなのが二人いるからね」
笑いを抑えながらそう楓は説明する。
「兄さん、あまり揶揄うのはどうかと」
椛がため息をつくと傍の椅子に座った。
「たぶんだと思うのですが……ご兄弟ですか?」
琥珀は単刀直入に質問する。椛は「ご名答」と頷いた。
「実際は兄妹というか双子なんだよ」
「双子率!?」
咄嗟に琥珀は叫んでしまった。確か薬研出雲の妹もだし、由良の従弟も双子である。
それについて楓は「いろいろ事情があってね」と口に指を当てて秘密的な仕草をする。それ以上はNGであることを無言で伝えていた。
「改めまして、オレが兄の楓、こっちが弟の椛。あまり似ていないのは二卵性双生児だからなんだよ」
不機嫌そうに椛は楓を一瞥する。
そして、それに気づいた楓は苦笑すると「はいはい、退散します」と呟き、琥珀に「またあとでねー」と手を振り離れを去った。