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時間稼ぎ

 それが何を意味しているのか……由良には理解できる。

 出雲の時もそうだが、解呪の苦しみは想像を絶する。術と術をぶつけるその反動は大の大人でも耐えきれるものではない。


 目の前で、琥珀は耐え続けていた。

「琥珀……」

 ノアのことなど頭から抜けていた。咄嗟に鳥籠に触れると、火傷のような痛みが走る。由良はお構いなしに格子を掴み琥珀の名を呼び続けていた。


 何回目かの失神と覚醒のち、琥珀が何かを呟いている。

「ゆ……ら……?」

 琥珀は枷が外れる音がする。

 手足の自由に気が付いて、横たわりながら浅い息をし、由良の方を振り向いた。

「由良……だ……」

 起き上がろうとして、体勢を崩しベッドから落ちる。

 そして全身の痛みを引きずりながら、由良の傍まで来ると格子にもたれ掛かる。

 辛うじて生きていると思える状態のようだった。

 由良は手の痛みなど気にせず格子から琥珀の頬に触れる。


 しかし琥珀が自由になったということは……もう時間がない事も自覚していた。


 琥珀を抱き寄せると、格子の間から琥珀の唇に自分のを重ねた。

 パリンッ! と衝撃が走り、鳥籠の結界が砕け散る。


 それは同時にノアにもバレたという合図であった。

 瞬時に琥珀の額に自分の額を付けイメージを送り込む。

「これが葉月召喚の魔法陣だ! 直ぐ実態を呼び出せ! アイツは化け猫だ。この空間でも実体化はできるしその方が全力を出せる」

 そう叫ぶと立ち上がった。


 目の前にはノアが嬉々として嬉しそうな表情で立っている。



「終わったみたいですね」

 そう言いながら歩み寄ってくるノアに、間髪入れず由良が足止めの術をかける。

 ノアはそれを気にせず、小動物を遊び殺す肉食獣のように嬉しそうに応戦していた。それはじゃれ付いているようにも見えた。


 捕縛呪印と攻撃魔法の攻防。由良は自分が幽体では、ノアに対しての勝機は見出せていない。


 本当にこれは命がけの時間稼ぎしかできなかった。


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