葉月vs湊
「のぅ、湊と言ったな。我が相手をしてやろう」
葉月がストンッと湊の前に降りる。
「いや……まじ猫が喋ったし」
湊は呆気に取られていた。
「琥珀、3割出しだ」
葉月が境内の中央へ歩み進む。
「琥珀ちゃん、そう言うことできるようになったの?」
柊がちょっとビックリした表情で尋ねる。
「ちょっとならコントロールできるようになったかなぁ」
そういうと、琥珀は呼吸を正した。
コントロールは少しできるとは聞いていたが、ここまでするとは思わなかった。
指輪をつけていても、意識的に放出できている。凄いところが、フェロモンを開放せずエネルギーと一緒にその身に纏わせることができている点であった。
八雲斐伊が「もういいんじゃね」って言っていた理由も一理ある。
その力と連動して、葉月が3m以上の巨大な化け猫へと化した。
湊が気圧されながらも、口元は笑っている。
スタートの合図は無かった。
葉月が一歩後退すると同時に尻尾を湊へ振り回す。
それを湊は掴むと化け猫葉月を吹っ飛ばした。
葉月は傍の講堂の壁に着地すると同時に、湊に襲い掛かる。
その爪の威力は、圧で吹っ飛びそうなほどであった。
前足の爪の攻撃をかわし、湊が殴りにかかる。それをヒラリッと後退し葉月はかわした。
葉月がニヤリと笑う。
両者が構え、隙を伺う。間合いを確かめながら、ジリジリと寄る。そしてどちらかが間合いに入った瞬間。
「ストーップ!!」
対峙する間に柊が入り込んだ。
「これ以上結界もなくやられるとウチ壊れるから、ね」
そういうと、葉月に「どうどう」と何故か馬への掛け声で収める。
葉月はチッと猫なのに舌打ちすると、元のサイズに戻った。