お願い
なんというか……柊と面影は似ているが、雰囲気が違う。柊は普通に大学生って感じだが、湊は何というか……チャラい? 変な違和感だった。
「兄弟でも違うんですねー」
琥珀は教えてくれている門弟に苦笑して尋ねた。
少し考えるように悩むというか、しばし沈黙が続く。
「湊様は、武道全般はウチの一門では右に出る者は居りません。あの柊様でもです。ただ……」
「ただ?」
「湊様には……その、異能が無いのです」
その言葉に改めてびっくりしてしまう。
「そういうことって、やっぱりあるのですか?」
今まで関わってきた本家の人々は皆異能を持って操っていた。例外を改めて知る。
「湊様はもう吹っ切れておられるご様子ですが……」
それ以上は言葉を濁す。
琥珀は無言で彼が去った後を目が追い続けていた。
練習が終わって、琥珀は母屋を探索していた。
探索というか、湊に興味があったのだ。
きょろきょろ見回しながら、廊下を歩いていた。
「お前何がしたいんだ?」
背後から声を掛けられて咄嗟に後ろを振り向く。
壁にもたれ掛かって腕を組みながら、湊は琥珀を観察していた。
「いや、そのちょっと迷って」
言い訳にしては苦しいものだったが、琥珀は咄嗟に湊に伝える。
沈黙が走った。
「ふぅーん」
まぁいいや、と湊は立ち去ろうとする。
瞬間、その腕を琥珀は掴んだ。
「なんだよ」
「あのっ!」
琥珀はこの後どうしたら良いのか途方に暮れていた。
正直なことを言えば「話をしてみたい」のだ。でもそれも不自然である。
「オレ出かけるけど、お前ここから出れないんだろ?」
その言葉に返答が詰まる。琥珀が結界の外へ無断で出る……それはご法度だった。