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「な……んで? ホントに……充?」
「そうだよ! それよか、元気してたぁ?」
「……。」
良輔は身震いが止まらなかった。なぜ、携帯電話がここにあるのか。それよりもなぜ、充が生きて、話をしているのか。頭が爆発しそうだった。
「ゆ、夢……なんだ」
良輔は自分をそうやって納得させようとした。
「これは夢だよ……。そうだ、そうだ! 夢だ! 醒めろ! 醒めろ!」
次の瞬間、それまでテンションの高かった充の声がいきなり低い、ドスの利いた声に豹変した。
「んなわけねぇだろ」
「!?」
「お前……いま自分の状況がどんな状況かわかってるのか?」
「え……?」
「ハハハ……! 知らないっての? 幸せなヤツだな〜」
相変わらず低い声で話す充らしき人物。良輔は恐怖で押し潰されそうになったが、なんとか堪えて聞き返した。
「ど、どういう意味だよ!?」
「ハハハハ……! 知らないならいいよ。知らないほうが、幸せなことだってあるんだ」
「……何が言いたい? お前……ホントに充か!?」
「さぁ……」
良輔は冷や汗が止まらなかった。悪い夢なら醒めてくれ。何度も心の中でそう叫んだ。
「なんなら、確かめてみる?」
「え……?」
「今ね……お前の家の前にいるんだ」
「……!」
その直後、ドアを叩く音が響いた。良輔の心臓が飛び跳ねそうになった。
「開けてくれよ」
「……。」
「なぁ。俺の顔、見たいんだろう?」
「……。」
「なぁ。開けてくれよ」
良輔はパニックのあまり、携帯電話を放り投げた。
「投げんなよ。投げたって、切れないぞ」
「やめろ……!」
「開けてくれ」
「やめろ!」
「なぁ」
「やめろおおおおおぉぉぉ!」
良輔は本棚にあった分厚い辞書で思い切り携帯電話を叩きつけた。何度も、何度も。携帯電話はメギッ、バギッと音を立てて完全に潰れてしまった。
「はぁ……はぁ……」
悪い夢だった。そう思おうと良輔は顔を洗いに下へ降りた。
「……母さん?」
降りてから気づいた。妙に家中が静まり返っていることに。
「父さん?」
幹夫も摂子も返事がない。ドクン、と良輔の心臓が再び鼓動を早める。
「!」
不意にドアを激しく叩く音が一回、響いた。
「誰だ……?」
良輔は暗い廊下をゆっくり歩いた。
「誰かいるのか!?」
応答がない。ただ、ドアの向こう側に人の気配は感じ取られた。
――今ね……お前の家の前にいるんだ
先ほどの充らしき人物の声が蘇る。一気に恐怖感が沸き起こってきた。
「……。」
良輔はドアスコープから外を覗きこんでみた。
「……誰もいない」
上下左右見渡してみるが、誰の姿も見当たらない。
「やっぱ……気のせいだよな」
そう思い、廊下のほうを振り向いた瞬間だった。誰かが立っている。それだけで突然、良輔の心臓は飛び上がり悲鳴を上げた。
「うあああああああああああああああああ――ッ!」
恐怖心で押し潰されそうになっていた良輔は一気にそのストレスを爆発させた。とにかく恐怖心を払いたい一心だった。靴箱の上に置いてあった高価な壷、それを思い切り正面にいた何かに叩きつけた。
壷が激しい音を立てて割れた。それから何かが倒れる音。暗がりの中での出来事で、良輔はとにかく必死だった。
まだ動いている!
良輔はそう思うといても立ってもいられず、傘立てを今度は乱暴に持ち上げた。傘が散らばるが、そんなことは関係ない。鉄製の傘立てを執拗に叩きつけ、良輔は息をするのも忘れんばかりに叩きつける行為を繰り返した。
5分ほど経って、ようやく良輔は落ち着きを取り戻した。いったい、この「何か」は何だったのだろうか。それを確認するために、良輔は廊下を覚束ない足取りで歩いて電気を点けた。
「ウグッ……!?」
良輔の目に映ったのは、完全に頭部が陥没した――担任の板倉 聡明だった。
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