表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

7/1 18:00

「午後6時になりました。ニュースをお伝えします」

 午後6時。良輔はリビングで食卓を家族と囲んでいた。ただ、昼間見たモノがあまりにも衝撃的すぎて、良輔はあまり箸が進んでいなかった。その代わり、といってはなんだが、自然とテレビに目が行く。いつもはそれを注意する摂子も、注意はしない。

 NHKのニュースだ。真面目そうな男性キャスターがニュースを伝える。

「まずは、地震のニュースからです」

(地震か……)

 良輔はあまり大きな地震を経験したことはない。なので、今まで地震のニュースと言われてもいまひとつ実感が湧かなかった。ただ、近畿地方出身だという父の幹夫は何でも、阪神淡路大震災という大地震を経験して、この手のニュースは苦手だそうだ。

 良輔は無意識のうちにチャンネルを変えた。いつのまにか、これがクセになっていたのだ。

「ごちそうさま」

「あら……。もう終わり?」

「うん……。食欲なくって」

「そう。あ、残ったおかず、まだ食べられるから置いておいて」

「うん。ゴメンな」

 フラフラとおぼつかない足取りで良輔は部屋に戻った。

「大丈夫かしらね……あの子」

「当分はしっかりと様子を見てあげたほうがいいだろうな……ん?」

 幹夫が摂子の顔を見た。

「……。」

「なぁによ、あなた。そんなに見ないで。恥ずかしいわ!」

「いや……。摂子、ちょっと顔色悪くないか?」

「えぇ? そうかしら?」

「光の加減……かな」

「そうじゃない? 別に体調はいつもどおりだし……」

 摂子は近くにあった鏡で自分の顔を映してみた。

「もう! 全然悪くないわ。いつもどおりのキレイなお母さんよね〜、美菜ちゃん!」

「うーん!」

 美菜が満面の笑みで答えた。


「……。」

 良輔はベッドに寝転がって音楽を聴いていた。思い出されるのは、倒れた志甫の表情ばかり。

 実は良輔にとって、死体を目撃するのはこれが初めてではなかった。初めては、小学校3年生の頃。友達と木登りをしていて、友達が高さ10メートル近くのところから足を滑らせて――。そこから先は、思い出そうとすると吐き気がする。

「……ッ! ヒグッ……ヒック……!」

 恐怖と不安でいつのまにか嗚咽を漏らしてしまっていた。そのときだった。


 ピルルルルルルルッ――!


「!?」

 電話の発信音。しかし、妙に機械的な発信音だ。それだけではない。そもそも良輔は――。

「俺……ケータイなんか持ってないのに……」

 テーブルの上で光るそれは、間違いなく携帯電話だった。音だけでない。バイブ設定までされているせいで、発信音と同時にブーッ、ブーッと不気味な音が響いてくる。

「……。」

 良輔は恐る恐る近づいて電話の待ち受け画面(と呼ぶのを良輔はいまいちわかっていない)を開けて見た。そして表示されているその名前に目を疑った。


 北川(きたがわ) (みつる)


「ミツ……? なんで……」

 そう。それは間違いなくあの時亡くなった友人、北川 充だった。

 電話を取ろうか取らないかしばらく迷った末、良輔は思い切って携帯の通話ボタンと思しき場所を押した。電話のマークで受話器が上がっている分、想像ができた。

 ピッ、という音。嫌でも心臓の音が大きくなる。

「もっ……もしもし?」

 そこから聞こえてきたのは間違いなく、懐かしい友の声。

「もしもし! 俺! ミツだよ!」

 間違いなく、充の声だったのだ。




                                        <残り23人>   








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ