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17/21

7/2 13:20


「良輔! どこへ行ってたの!? 心配したのよ……ちょっと、良輔!?」

 良輔は摂子の言うことも聞かず、美菜の遺体が安置されている部屋に入った。

「どうした? 良輔」

 ハァハァと肩で息をする良輔を見て、幹夫が目を丸くした。良輔は勢いよく部屋に駆け込むと、美菜の遺体が安置されている棺の蓋を開けた。

「良輔! どうしたんだ!?」

 幹夫が良輔を止めようとするが、彼はその手を振り払い、美菜の冷たくなった体を抱えた。

「どこかに……どこかにあるのか?」

 良輔は必死になって美菜の小さな体中を探し回った。

「あっ……!」

 探していたそれは、美菜の足の裏に小さく彫られるように浮かんでいた。

「00:19:53……。19分と53秒ってことか?」

 しかし、美菜のその表示はもう動いていない。良輔は自分の刻印(それ)を見てみた。

「35:23:20……」

 ほぼ、確信を持てた。これは何らかの時間を表しているのだ。良輔は幹夫や摂子にもその刻印があるのかどうかを確かめたかったが、今では怪しまれるだけだと思い、やめておいた。

「良輔……。お前、どうしたんだ?」

 幹夫が心配そうに良輔の顔を覗きこむ。

「も……もうすぐ、火葬するんだよな……?」

「あ、あぁ」

「最後に……美菜の顔を見ておきたかったんだ」

 それらしい理由だったと良輔は思った。

「そうか……」

 幹夫は優しく良輔の頭を撫でた。その最中も良輔はまったく違うことを考えていた。

(このことを誰に伝える……? 雄哉は無理だ。アイツはきっと、何かを隠してる……。美咲は? いや……。そうだ! 大地はどうだろう? 俺のことを兄貴のように慕ってくれるし! そうだ。大地ならとりあえず……。いや、でも幼すぎるか……)

「良輔」

 摂子が良輔を呼んだ。

「何?」

「消防の十河さんが、あんたを呼んでるわよ」

「十河さんが?」

 良輔は首をかしげた。それまで接点がほとんどなかった平祐が、自分に何の用だというのか。

 ひとまず良輔は平常心を装って表へ出た。

「よう」

「こんばんは」

「実は……お願いがあって来たんだ」

「お願い?」

 平祐は一連の出来事を良輔に伝えた。

「ほ、本当ですか? それ」

「それが本当かどうかを確かめるために……川村先生と俺と浦上くんで、確かめることになったんだけど……何か、不安で……」

 その気持ちは良輔もよくわかっていた。ましてや、怪談じみた話を怪しさが拭えない雄哉と共に探りに行くというのだから、平祐も不安になるのは無理がないだろう。

「それで、俺に跡をつけてほしいってことなんですよね?」

「あぁ……無理を承知なんだが」

 良輔も不安だった。しかし、何かがわかるかもしれないという期待感が急に沸き起こり、すぐに答えは出た。

「明日の……午前2時ですよね?」

「あぁ。来てくれるのか!?」

「はい」

 雄哉のこと。楠の話。すべてを知るために、良輔は行くことを決意したのだった。


 翌日午前2時。

 両親が寝静まったのを見計らって、良輔は自宅を抜け出した。そして約束の時間である午前2時より少し前に、良輔は約束の場所である羽生川の中州に近い茂みに無事到着した。

「こんなところで用事って……雄哉、やっぱり変だ……」

 良輔は最近の雄哉の不審な行動に身震いした。友人の考えがまったく読めない。

「暗いし……普通に怖すぎるだろ」

 虫の鳴き声がする。良輔は自分の息の音が漏れて、誰かに気づかれないかどうか不安で仕方がなかった。

 遠くで話し声がする。そして、足音が近づいてきた。

「待ち合わせ場所は、このあたりだろう?」

 その声は平祐と新吾だった。

「それにしても、なんでまた雄哉くんはこんな場所を指定してきんだ?」

「さぁ……。人気が少ないほうがいいとか言ってましたけど」

 平祐は新吾の問いに戸惑いながら答える。

「何か変なこと考えてるんじゃないだろうな」

 新吾が面白半分で呟いた。

「まさか! 雄哉くんに限ってそんなことは」

「ハハハ! だよな!」

 良輔もそう信じたかった。しかし、雄哉の行動がおかしくなってきてから、自分の中でそう思いたいのに、心がその思考に追いつかないのだ。

 その時だった。

 ヒュウッ……と何かが空気の切る音が、良輔の耳に響いた。直後、グジャッ!と何かが潰れるような音が遅れて良輔の耳に伝わる。

「ひゃあああああああああああああ!」

 それは平祐の悲鳴だった。バシャアッ!と何かの倒れる音。良輔は驚いて茂みから平祐と新吾のいる場所を覗き込んだ。

「……!」

 新吾の頭に、鉈のようなものが刺さっているではないか。

「ひっ! うああああああ!」

 平祐が逃げ出そうとしたと同時に、新吾の頭から鉈を抜き取り、その人物は容赦なく平祐の脳天に鉈を振り下ろした。

 グジャッ……!

 一瞬だった。そのまま川の中に平祐は倒れ込み、もうピクリとも動かなかった。

「あ……あぁ……」

 良輔は声が漏れないように口を覆うのに必死だった。

「ゴメンなさい……。新吾先生、平祐さん……」

 聞きなれた声が良輔の耳に響き渡る。

「でも……もう時間がないんですよ。予想以上に疲弊が進んでいて、皆さんのカウントダウンが縮まってる……」

 月明かりが雲間から降り注ぎ、川の中で立ち尽くすその人物を照らし出した。

(う、うそだ……!)

 それは一番の友人である、雄哉の姿だったのだ。しかし、その姿はもはや見慣れた友人の姿ではなかった。

 平祐と新吾の返り血を浴びた、狂った姿だったのだ。

(カウントダウン……?)

 雄哉の言葉がフラッシュバックする。良輔は慌てて自分の刻印を腕まくりして見た。

(17:30:29!?)

 先ほどまで確かに29:32:45だったはずの刻印が、なぜか17まで減っていたのだ。

(疲弊って……なんだ!? でも、俺の刻印も確実に減って……カウントダウンと、この腕の刻印は関係があるのか!?)

 思わず尻餅をついた良輔。その時、メキッ!と木の潰れる音がしたのだ。

「!」

 グルン!と雄哉が良輔のいる茂みを睨みつけた。

「……!」

 恐怖のあまり震える良輔。パシャパシャと雄哉がこちらへ向かって歩いてくる。

「誰かいるのか……?」

「……。」

「素直に出てきたら、許してやるからさ……」

 しかし、恐怖のあまり良輔はだんまりを決め込んでしまった。

「……そこらへんにいるのはバレバレだっつーのにさ」

 突然声を低くする雄哉。そして、とても良輔の知る雄哉とは異なる行動を、開始するのだった。






<残り17人>







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