6話.足りない物
短い
速報:寿司は美味い
木の上からべちゃりと落ちてきた水をサッと避けて、煩わしそうにこちらを見上げるラウンド・パンサー。
何で、何で魔術が成功しないの・・・?
「も、もう一度。水よ集いて 矢となり 射れ『水の矢』」
水が集まり、細くなり、落ちる。
「お、お約束の様に落ちないでくれ・・・」
何が原因だ?やり方が間違ってるとか、何かの環境が違うのか・・・。
いつもなら、詠唱して、敵めがけて思考誘導で当てて・・・。
思考誘導。想像して、当てる。
「水よ集いて 矢となり 射れ『水の矢』!」
水がどこからともなく集まり、集い、細くなる。
そこに、そこに水よ留まれ!
ぎゅっと眉間に皺を寄せ、水を睨みつける。
思考誘導、思考。
思考は、考えること。
考えること、考え続けて。
水を、そこに留める!
そこには、矢の形に集まった水が落ちることなく存在していた。
「う、ぅおっしゃっー!」
喜びの感情を爆発させるように両手を握りしめ、天高く突き出す。
ゴッ
「ウグァ」
木の上ですので、上方にある枝に思い切り両拳をぶつけましたが何か?
勿論集中が途切れたので、魔術によって集められた水は再び地に落ちていきました。
すっごい痛いけど置いといて。
コツは分かった。コツというより、違いかな。
ちゃんと、1から10まで考えて...というよりも自分で魔術を動かして、想像して、そして初めて成り立つ。
意味わかんないよね。私も。
まあ、ゲームの時みたいに何も考えずに呪文唱えてから考えてたらもう遅くて。
呪文を唱えながら集中、術を宙に浮かすのを想像して、そこに留めるのを想像して、初めて成功。
「よしこれで魔術はオッケー、覚悟しろよ」
水よ集いて、から始まる今日何回唱えたか分からない呪文を口に出す。
「『水の矢』!」
今日何度も見た、水が矢になるの現象を自分で起こす。
水を集めて、矢にして、打ち出す。
鋭い水が空を切りながら、ラウンド・パンサーの肩口辺りにに突き刺さる。
獣の悲鳴と共に鮮やかな血が吹き出る。
「えっ」
ここは現実だ。
そんな事を言っていた。思っていた。
でも、どこかでゲームの世界だから大丈夫、全然問題ナイナイって思っていた。
敵を倒したら消えてアイテムが残って、敵を攻撃しても何パターンかある鳴き声を出すだけ、血は出ずにエフェクトが出るだけ、そう思っていた。
自分の体を切ってもまだどこか夢うつつで、追いかけられて食べられそうでもまだ信じきれなくて、
自分の手で、生きている者を傷つける。
それがどこかあやふやな私を一気に現実へと押し上げたのだ。
「 」
言葉にならない言葉が口から漏れる。
傷つけたことにより更に殺気立つモンスターの殺意が、怖い。
足りなかった。
何がって?
覚悟だよ。
覚悟。覚悟覚悟覚悟。
何が覚悟は出来ている、だ。
何がいけるだ。
ムリ。マジムリ。吐きそう。
怖いよ。誰かを傷つけるのは。
痛いじゃん。自分を傷つけるのは、自分だもん許容するよ?
でもね、他人とか知らない人とか友達とか家族とか。
自分以外を傷つけるのは怖い・・・。
「ううう・・・」
呻いて、どうするか考えて、頭を回してかき混ぜて、上を向いて歩かないで、涙の数だけ強くなって。
とりあえず
「お腹空いた・・・」
ちょっと無視できないくらいにお腹が減ってきたのですが。
主人公内心の変化とか、シリアスぶっ壊れた所で区切りたいから短くなってしまう
次はもうちょい長くしたいなぁ
次回、何故主人公はお腹が空いたのか?
お楽しみに!