2話.これ進〇ゼミでやったやつや
めっちゃ痛いやん・・・。
やらなければ良かったとかちょっと思いつつ、浅い傷からジワリとにじみ出る血を睨む。
VRには体感した感覚を脳がそのまま受け取ってしまい、脳に障害なんかを負ってしまったりするので、体感する感覚などはかなり鈍く制限されている。
VR専用機体に製造段階から、強い刺激等や心拍状態に反応して強制的に意識の覚醒を行わせる機能がつけられている。
この痛み、この血、この胸の高鳴り・・・。
VRで感じたことの無い感覚は確実にログアウト確実なので、それがないことつまりここは現実・・・。
なんでなんで何があった?
ここはどこ?私は誰?
嘘です記憶はバッチリです。
たぶんここは、異世界。
今の私の格好、今の周辺、見覚えのあるモンスター。
あ、格好に関しては後で説明するね?
ちょっと逸れた。つまりここは!Dream world RPGの世界!かもしれない・・・ちょっとまだ、いえかなり疑ってます。白昼夢とかの可能性もある。
疑り深いぐらいがちょうどいいからね。
今は身の安全を確保しなきゃ。
血の滲む手の甲を服の裾で一度押えて、血を拭き取りキッと前を向く。
目と目が合う瞬間好きだと(ry
くすんだ黄色い毛皮にまだらの茶の斑点がチャーミング。
どこかチーターに似たような見た目にチャーミングさを全てかき消す飢えた目。
音もなく忍び寄る獣が一匹。腹を空かせてこちらを襲う算段をつけている。
私が気付いたことに気付いた獣はぐぐっと身体をかがめる。
あ、これは
見たことある。
どこでだって?勿論ゲームの中さ!
この動作は獲物に飛びかかるときの動き。つまり私に襲ってくる!
ここまで来た道を戻るかのように逃げる。私がいたであろう場所で叩きつける音がしたのを置き去りに、私は駆ける。
このままでは、ジリ貧だ。こいつの名前はラアウンド・パンサー、森の中に住み足の速さを武器に敵を追い詰める!
「いやいやいや死ぬむりー!」
慣れない森の中、自分に襲いかかった出来事、自分を食べようとする獣。
心の恐怖を無理矢理押さえつけ、何か打開策はないかと頭の中ぐちゃぐちゃになりながら探す。
こいつの名前はラウンド・パンサー森の中に住んでて走るのが得意で取れる素材は毛皮牙爪肉と錬金術に使える目玉と心臓足音を消して歩くので気付かれずに襲われるケースも多いが攻撃方法が噛み付く引っ掻く突進といった物理攻撃しかないのでそこまで強くなく現にPOPする場所は低レベルのプレイヤーが訪れるフィールドに多くて足は早いが段差を乗り越えたりするのが下手でそれを利用して戦うと有効的で崖から落として倒すというケースもあって
て
こ れ だ
段差に!弱い!
良いぞ私の脳みそ良いことを思い出した!
高いところに逃げ込む!ここは森!木に登れば!
バッと右を見る。掴むところのなさそうな木がある。
バッと左を見る。同じく登れなそうな木が。
前はここに最初にいた所、木に木が生えてるモンスター。
木に巻き付き埋まり本体?の木からあちこちモンスターの身体を飛び立たせている。
掴むところはありそう、ありそうだが。
「女は!度胸!リターン!」
これが襲ってくる方のモンスターだった時は素直に諦めよう。
ガッと掴みやすい枝に掴み勢いで上へ上へと登る。
手のひらが擦れる痛みを無視して可能な限り獣なモンスターから離れる。
てかこの木は共生する木だったね、襲われないし。
枝があちこちから生えてるので意外と容易に高いところまで行き、ちょっと平らで平行になってる枝によっこいせと座る。
「ふふ、ここまで登ってこれまい」
高みの見物気分で見下ろす。モンスターはウロウロしてこちらを見上げつつ悔しそうにしている。
ざ ま あ
心の底からそう思った瞬間。
いやあそれにしても、
「これからどうしよう・・・」
途方に暮れるのであった。