『従兄弟のアルムハムニ』
研究対象-×××は十代後半の日本の一般的な男子学生の様に見えます。標準的な身長・体重で、髪を茶色に染めています。
研究対象-×××は初対面の人間にに必ず『お前は従兄弟のアルムハムニだろ?』と聞きます。その人物を『従兄弟のアルムハムニ』の様に扱いますが、それ以外は一般的な男子学生の言動をします。
『従兄弟のアルムハムニ』と聞かれた人間は否定しますが、長時間対象者と接触すると徐々に『従兄弟のアルムハムニ』の条件に合った性格・容姿になります。以下は分かっている条件です。
・『従兄弟のアルムハムニ』は男性の様で男性の服装を好み髪が短髪になる。
・自分の本名ではなく『従兄弟のアルムハムニだ』と言う。
・完全に侵食するとどんなに好意的な人間でも研究対象―×××に殺意を向ける様になります。
※これ以上の実験は研究対象―×××が嫌がった為行っていないが、恐らくは人格・嗜好まで『従兄弟のアルムハムニ』と言う人間になると思われる。
完全に『従兄弟のアルムハムニ』となった人間(実験の結果、人間にしか効果がない)は研究対象―×××に一度でも殺意を向けると、何処からか『大型犬位の大きさの真っ黒な犬』(以降は研究対象―×××―Aと表記)が現れて殺意を向けた人間を噛み殺します。
研究対象―×××本人もその存在の正体を知らず、止める事は出来ないそうです。
因みにですが研究対象―×××の身辺調査をした所、『従兄弟のアルムハムニ』と言う存在はどんなに捜索しても存在していません。
研究対象―×××の収容所は10M×8Mの特別施設に収容して下さい。設備としては一般的な日本の男子学生と同じ様な家具を設置します。彼からの要望で書籍や音楽、ゲーム等は可能な限り与える事を許可します。彼のパソコン、スマホから外部との繋がりが持ちますが、必要以上の個人情報は彼は出しませんが、万が一の為にネット等の監視はして下さい。
備考①
研究対象―×××が保護される前は活発な性格ですが、現在は酷く怯え隅にいる事が多いです。人と関わる事を恐れ、近づくと半狂乱になります。自殺を仄めかす言動がありますので、定期的なカウンセリングを受けて下さい。
備考②
研究対象―△△△が脱走、偶々カウンセリングの為に施設を出ていた研究対象―×××を襲い掛かりました。研究対象―×××―Aが出て助けた為、怪我はしませんでしたが研究対象―×××―Aが研究対象―△△△を殺そうとした時に、十代後半のアジア系の全身真っ黒な女性(以降研究対象―×××―Bと表記する)が研究対象―×××―Aを止めました。
研究対象―×××―Bの顔を見た瞬間、研究対象―×××が号泣し、研究対象―×××―Bに抱き着きました。
以下偶々録音機を持っていた研究員による録音から一部抜粋。
―――ごめん! ごめんなさい!! 分かっていたのに! 分かっていたのに!!!!
―――いいぜ。許す。許すから顔を上げろ。
―――本当は離れるべきだって事は分かっていたんだ。だけど、だけど。
―――分かったから。もういいから。
この間、研究対象―×××―Aは大人しく見守っていました。その後研究対象―×××が泣き止むと研究対象―×××―Aと研究対象―×××―Bは我々の目に映らなくなりました。以降、研究対象―×××は自傷行動や自殺衝動をしなくなり、我々にも笑顔を見せる様になります。『問題ない』と主治医からお達しが出ていますので、研究対象―×××のカウンセリングは停止します。
備考③
研究対象―×××―Aは大型犬位の大きさの全身真っ暗な犬です。犬種としてはシェパードが一番近い造形をしています。目に当たる部分は全て真っ白ですが、それ以外の口の中等は全て黒一色です。
普段は我々には見えませんが、研究対象―×××と研究対象―×××―Bだけには見たり触ったり出来るようです。
研究対象―×××の証言によれば研究対象―×××―Aは大人しい性格の様ですが、何故か『従兄弟のアルムハムニ』が研究対象―×××に殺意を少しでも向ければ即座に噛み殺しに掛かります。
『従兄弟のアルムハムニ』ではない人間が殺意を向けても反応はしません。ただし本当に殺しに掛かれば噛み殺されます。
研究対象―×××-Bの証言によれば『普段は研究対象―×××の足元に犬の様に引っ付いている』そうです。
研究対象―×××―Bはアジア系の十代後半の少女の見た目です。此方も全身真っ暗ですが研究対象―×××―Aと違い、研究対象―×××―Bは灰色が混ざった様な色合いです。目は汚れた様な金色で口の中はほんのり赤色です。
髪は短く切られており、服装も真っ黒ですが長袖のシャツにズボンと一見男性と見間違いそうですが、体格や胸の膨らみ、声等の身体的特徴と本人の証言により『女性』だと確定しています。
言動は男性の様に振舞いますが、好みや思考は女性の好みです。彼女から女性雑誌や漫画・アニメ、女性物の可愛らしい洋服を要望しますが、研究対象―×××と同じ様な対応で行って下さい。
洋服に関しては自分で着る事はせず、用意されてあるマネキンを着せ替え人形の様に着せてそれを鑑賞しています。
又、研究対象―×××が保護された現場から三メートル離れた場所で『野犬によって噛み殺された』少女の遺体が発見されました。
彼女は研究対象―×××が通っていた学校のクラスメイトで、研究対象―×××と仲の良かった女子生徒だと判明。殆ど即死の状態で発見されました。
研究対象―×××が保護された時に服や顔が血塗れでしたが、彼の血ではなくDNA検査の結果この女子生徒の血だと判明しました。
又、研究対象―×××が茫然自失状態の時に譫言により、彼の目の前で研究対象―×××―Aが女子生徒を噛み殺したと模様です。
チームCはこの事が露見しない様に何時もの様に偽装工作を行い、全て完了しました。
この女子生徒の顔が研究対象―×××―Bに瓜二つです。
備考④
研究対象―×××―Aの証言は取れませんが、研究対象―×××―Bとのコンタクトに成功。~~博士とのインタビューを掲載します。
―――貴女の名前は?
『『俺は従兄弟のアルムハムニ』! ……俺が此れしか言えない事は分かっているだろ? アンタ達の事だから俺達の過去位簡単に分かる筈だ』
―――貴女は□□□・◇◇◇(殺された女子生徒の名前である)で間違いないのね?
『ああそうさ。自分からその名前を言う事も書く事も出来ないが、肯定は出来る。因みにその名前だった時の趣味嗜好はそのままだが、それ以外は『従兄弟のアルムハムニ』に沿うような形に改変されてしまうみてえだ』
―――改変されるとは具体的にどんな風に改変されたの?
『良い例は俺の髪型さ。俺になる前は烏の濡れ羽色の腰まである髪だった。自慢じゃないが誰もが俺の髪を褒めてくれたぜ。……@@@も『綺麗だ』てっ褒めてくれた』
―――@@@と言うと?
『アンタ等が研究対象―×××て呼んでいる奴の本名だよ。まぁ俺もアイツから言われるまで分からなかったけどな。不思議だよな~アイツから聞くまでアイツの名前なんて気にはしなかった。本名を聞く前なんてアイツを呼んでいたか覚えていねぇ』
―――そう分かったわ。それで改変された時の話の続きをして貰える?
『あー……その、だな。最初の違和感と言うか、『従兄弟のアルムハムニ』に汚染された切っ掛けは『ズボン』だな。当時の俺はスカート、ロングも好きだがどっちかって言うとミニのスカートが好きで校則ギリギリの長さのを着ていたんだ。
何て言うかな~気づいた時の気持ちを何て言うか……ふと気づいたって言うか……良い言い方を言えないけど、例えるなら薄い膜が破れた様な感じって言うか、ある日パって気づいたんだ。
『そう言えば最近ズボンばっかり着ているな』って。学校でもジャージのズボンだったし、私服もズボン。その時になってやっと腰まであった髪が結べる程度の長さになっていた事も気づいた』
―――……家族や友人は髪の事や服装の事を指摘しなかったの?
『それがてーんで言わないの。俺から言ってやっと気づいたみたいだった。それもびっくりした訳ではなく左程驚かず『ああ、そう言えばアンタ髪短かいわね』って。
皆そんなんだったし、俺も大して気にはしなかったし。……多分それもアイツの能力? って奴かも』
―――貴女は何処まで研究対象―×××の能力の事を理解しているの?
『全然理解していないよ。分からない事だらけだし、アイツもどうして自分が『従兄弟のアルムハムニ』て言うのか、何で自分の傍に居続けたら人間が『従兄弟のアルムハムニ』になっちまう事もあの犬……あんた等が研究対象―×××―Aて呼ばれている黒い犬の正体も、あの犬自身分からないと思うぜ? 話した事は無いけど、俺がこんな風になってからは何となくテレパシー? 的なアレでちょっと分かる様になったし』
―――貴女は如何して彼、研究対象―×××の事を恨まないの?
『……何でだろうなー。本当なら憎んでも可笑しくないのに。いくら性格改変されてもこの状態になってからは幾分元の『自分』を取り返せられたし』
―――だったら猶更
『………………俺が殺されたあの日。何の恨みのないのに俺はアイツに何故か殺意を沸いてしまった。それをアイツに向けたからあの犬に殺されるになったから止めた』
―――はぁ? 止めた?
『こう口の先と先を抑えて何とか喉元を噛み切れない様にした。多分火事場の馬鹿力って奴だろう。後……多分俺はそこまで『従兄弟のアルムハムニ』になっていなかったからか?』
―――どう言う事?
『此れは俺の想像でしかねぇから多分正解じゃぁないと思う。だが、俺以外にあの犬に殺された人間達の姿が見てないし、あの時抵抗で来たし、そもそも前の『俺』の記憶もあるし、明らかに『従兄弟のアルムハムニ』に完全になっていなかったぜ? 完全体は恐らく全ての記憶や人格まで『従兄弟のアルムハムニ』になると思う』
――貴女が『従兄弟のアルムハムニ』に染め切れなかった理由は分かるの?
『うん、まー……。さっき言った通りにあの犬の噛み殺されそうな時に俺はアイツに助けを求めた。けどアイツは俺を助けなかった。……多分助けられなかっただろう。再開した時の号泣ぶりを見ればアイツは俺を助けたかったけど、助ける事が出来なかったみたいだ。それも能力の代償、と言うかアレは呪いか。
……アイツ泣いてたんだ。笑いながら泣いてて、それを見てたら何て言うか……許すしかないと思ってさ。その時つい力を緩めたもんだがらあの犬にガブッと』
――……どうして許しちゃったの?
『前の俺、と言うか今でも俺はアイツの事を好きなんだよ。惚れた弱みって奴? 好きな相手の我が儘を許しちゃうタイプみたいだ俺は』
――……
『今の姿は案外気に入ってるぜ? 可愛い服が着れないのが残念だし、友達や家族を泣かせる様な事しちまったし。でも勉強しなくてもいいし、あの犬は普通にすりゃあ可愛い犬だし。……アイツの傍に居られるし。
ちょっと残念な事は普通の学生の様な青春を送れなかった事かな』
以上の記録は終わります。
※研究対象―×××達の様子から精神安定の為に学生の青春らしい事、例えばスクリーンの映画を見せたり、研究所専用の施設の利用を許可出来ませんでしょうか? ~~博士
――監視付きで彼等の要望があれば特別に許可します。
報告は以上です。
この話の元ネタは私の夢からです。なんかあの有名財団風な世界観だったので真似てみました。大丈夫な筈ですけど、色んな方から叱られそうですので二次創作タグを付けさせて貰いました。