表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/58

繰り返す悲劇2

引き続きの投稿です。

よろしくお願いします。

3年前両親を亡くしたこの交差点には、家も近い事もあり毎日通る事にしていた。

魂がもしこの地に束縛されているなら、せめて成長した自分達を見てほしかったから。

そして今日も二人でこの交差点を渡る。


パアアアアーーーーーーンンン グワシャン!! ビィーーーーーーー!!!


二人が横断歩道を渡り始めた瞬間、けたたましい車のクラクションが鳴り響き、大きな固まり同士がぶつかる嫌な音がした。

二人は同時に音の方向へ視線が向く。

そこには自分達の方に向かって、乗用車が突っ込んで来るのがはっきりと見えた。

それはまるでスローモーションの様にゆっくりとした動きに見えた。

本当なら2、3秒の事なのだろうが、こういう死に直面した人間には考えられない程のスピードで思考出来るものなのかもしれない。

実際、京華にはナンバープレートや運転手の顔までハッキリと見て取れた。

そのせいか、暴走する車の方向が自分達の方に向いてないと一瞬で判断出来た。


「これなら・・」


「危ない!!」


京華が大丈夫と判断したその時、涼介の叫ぶ声が聞こえ前方の方に飛び出して行くのが視界の端に写った。

咄嗟にそちらに意識を向ける京華には、暴走車が進む方向に母親と連れられていた5才くらいの女の子が、横断歩道の上でうずくまっていた。

多分、先程の車の衝撃音とかで驚き咄嗟に身体が動かなくなったのだろう。

それを見てしまった涼介が、考えるより先に身体が動き親子目掛けて突進する。

それほど大きくない涼介だが、火事場の馬鹿力なのか、親子をタックルし2メートルくらい先まで飛ばす事が出来た。

でも、そこまでだった。

親子を吹き飛ばした変わりに、涼介がその場に体制を崩しながら残ってしまった。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


グシャリといった様な、肉が潰れる様な骨が砕ける様な異様な音を京華の耳は聞いてしまう。

間の前で起きた事にまだここにいる誰もが気づけていなかった。

一体どれくらいの時間が経ったのだろうか?

京華が意識が無かったのは、ほんの一瞬だったのかもしれない。

でも、それはとてつもなく長い時間でもあった。

今まで手を繋いで笑い合っていた、最愛の弟の姿が京華の視線の先にいなかった。


「リョウ、、ちゃん、、、、」


京華はゆっくりと、本当にゆっくりと首を右に向ける。

その先は先程の暴走車が過ぎ去って行った方向だった。

京華は見た。

15メートル先の向かい側の歩道に乗り上げて止まっている車を。

車は歩道の柵を破り、そのまま乗り上げ歩道沿いの店先のブロック塀にぶつかってようやく停止していた。

京華は、フラフラと立ち上がると、自分がいる位置と車の間を確かめるように見つめる。


「居ない、、、」


京華は歩き出す。

その京華を、震えながらも自分の大泣きする幼子をしっかりと抱きしめる母親が見つめる。

その母親も一瞬で理解する。

さっきまで横断歩道の信号が変わるまで隣で楽しそうに話ている高校生くらいの二人の内の一人だった事を。

そして、暴走する車が目の前まで来た事に気づいた直後、後ろから思いっきり突き飛ばされた事。

そして、もう一人の高校生が今何処にも居ない事を。

歩き出しはじめた京華にその母親は声を掛けようと手を伸ばしたが、その表情を見て凍りつくように止まってしまった。

京華は気付かず、フラフラと暴走車の方へと近づいて行く。

遠くの方ではサイレンの音と聞こえ始め、周辺からは多くの人が集まり始める。


「早く救急車!」

「子供が跳ねられた!」

「早くあの車を動かさないと、子供が!」


何人かの通行人が歩道に乗り上げた車を動かそうと集まり始める。

そこへ、京華が近づく。

京華は、恐る恐る車の前方に向かって行く。

すると、車の前輪の下辺りに、グシャグシャになって転がるコンクリートの破片に大量に血の様なものが飛び散っているのを見てしまった。


「う、うわあ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!!」


到底可愛らしい女の子が叫ぶ様な声ではなかった。

地の底から沸き立つような恐ろしい叫び声の様に周囲に居た人間は感じただろう。


「お嬢ちゃん、危ないからどいてくれ!」


一人の男性が、善意で京華を車から離そうと肩を掴む。


「わたしにさわるなあああ!」


あまりの威圧の叫びに、男性は数歩、後退ってしまっていた。

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ