繰り返す悲劇1
続いて投稿致します。
「お姉ちゃん、あれから3年も経っただね。」
「そうね。」
京華と涼介は、信号機の横に供えられている小さな花束を見つめていた。
「僕、高校卒業したら大学はいかないから。」
涼介の言葉に、普通なら驚くとかの反応があってもおかしくないが、京華は優しく涼介を見つめるだけで特に驚くでもなく怒るでもなかった。
「そう、やっぱり犯人を捜す事にしたのね?」
「うん、最初は警察官とも考えたけど、組織に入ると行動が制限されて思うように犯人探しなんて出来なくなるから。」
静かに語る涼介だったがその真剣な眼差しは、犯人を必ず探し出すという決意で満ちていた。
そんな涼介と同じ思いを持つ京華も改めて決意する。
「そう、解ったわ。二人でなんとしてでも、お父さんとお母さんの命を奪った男を捜すわよ! 幸いお金はお父さん達が十分以上の財産や金額を残してくれたからね。最悪はバイトしてでも二人で頑張るわよ!」
二人は交差点の花束に誓う。
「それと、その財産目当ての親戚連中っていまだに来てるの?」
「そうね、弁護士の先生とも話してるけど、初めの頃に比べれば少なくなったけど、まだ有るらしいわよ。」
二人は、大きく溜息をつく。
3年前、この場所で起こった事故で二人の人生は大きく変わった。
両親を突然亡くし、大怪我を涼介は負った。
そのうえ逃げた犯人は未だに捕まっていない。
警察も必死に探しているのは解るが、二人にとって警察も当てにならない存在でしかなかった。
そして、二人が相続した生命保険、財産が結構な金額だった事で、今まで疎遠になっていた親戚連中が大挙して押し寄せ、二人を引き取ろうと争奪戦が始まった。
二人は金の亡者と化した親戚の愛想をつかし、両親の知り合いだった弁護士に財産管理をお願いし、自分達はどの親戚の世話にならず二人で生きていく事を宣言した。
それでも事あるごとに言い寄ってくる親戚にうんざりし、何処から嗅ぎ付けたのか、セールスや不動産の投資の話を持ち掛けられたりと、人の浅ましさをまじまじと見つめ続けてきた。
そのせいか、二人は大人に対して良い感情を持つことが出来なくなり、余り人と関わらないようになっていた。
「あんな禿鷹みたいな連中ほっとこ。私はリョウちゃんだけ居てくれればそれ以上は必要ないもの。」
「ありがとうお姉ちゃん。でもそれだと、お姉ちゃんに良い男が出来ないよ?」
「え?ちゃんと居るわよ?」
「えええ!? 誰?! そいつは! 僕が認めないと絶対ダメだからね!」
「え? 私の目の前にいるじゃない?」
「?! 僕?」
「そ、リョウちゃん以上の良い男なんて居るわけなじゃない。」
素直な気持ちを涼介にぶつける京華に少し戸惑う。
「でも、ほら僕ってさ女の子みたいな感じだから、格好良いとは程遠いと思うんだけど・・」
顔を赤くし、京華から視線を外した涼介。
「私は、本気だから。こんな私達に厳しい日本になんて住んでいる必要なんか無いもの。犯人を探して出して警察に突き出したその後は、外国に永住してリョウちゃんをお婿さんにするんだもん!」
さすがに京華も恥ずかしかったのか頬を赤らめている。
思いきった発言に涼介の方は、少し驚いている様だったが、少ししたら落ち着きそして溜息を小さく漏らす。
「やっぱりお姉ちゃん本気だったんだ。」
「え? リョウちゃんは嫌、なの?」
「・・・・・・嫌なわけないじゃん。」
小さく本当に小さく呟く涼介の返答に、この世の春と言わんばかりの笑顔で、公衆の面前関係なしに抱き着く京華。
「ぐうぇ!」
どうしても涼介の方が背が低いので覆いかぶさる様な格好になる上に片手には買物袋と学生鞄が邪魔で変に圧迫してしまって涼介は変な声が出てしまった。
「だ、大丈夫リョウちゃん!?」
「だ、大丈夫、それより青になったよ。早く渡ろう?」
読んでいただきありがとうございます。