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回想 悲劇

投稿致します。

話は数年前に遡る。


中学生になった男の子を、お祝いをする為に家族4人で、家の近くのちょっと高級そうなフレンチレストランに歩いて向かっていた。

父と母、それに中学3年の姉に今日の主役の男の子の4人家族は、近所でも評判の仲良い家族だった。

お互いの誕生日や、こんなイベントがあれば4人で必ずお祝いをするのは当たり前。

男の子が習字で金賞取ったらお祝い、姉が学級委員長になったらお祝い。

家族の誰かが悲しい事があれば励まし合い、嬉しい事があれば皆でお祝いする。

本当にそれぞれがそれぞれの事を考えてくれる理想の家族だった。

ただ一番下の男の子は、小さい時から女の子と間違われ、その容姿のせいでよく虐められる事が多かった。

それさえも姉が身体をはって助けてくれる。

それを知った父と母は二人で学校に乗り込み虐めた子の親御と先生相手に大立ち回り。

家族の為ならとことんやり通す、近所でも有名な家族だった。


そんな誰もが羨む家族はこの日消えてしまった。


「誰か! 救急車を早く!」

「これは酷い。」

「二人、トラックの下敷きになってる! 誰か持ち上げるの手伝って!」


交差点の周りには通れなくなった車が立ち往生し、その運転手も目の前で起こった事故の悲惨さに青ざめる。

歩道にも周辺の店や家から人が集まり、ただ呆然と見る者、現場へ近づき指示するもの、倒れた人から出る血をを止めようと応急処置する者で溢れかえる。

遠くでサイレンの音が聞こえそれが徐々に近づきその数もドンドン増えていく。

数台の車が大破横転し、複数人が血まみれでアスファルトに横たわる。

まさしく地獄絵の世界だった。


「京華お姉ちゃん、大丈夫?」

「え?! リョウちゃん?」


今にも消え入りそうな弱々しい声で、でも姉を心配する涼介は姉を庇うように覆いかぶさりながら微笑んでいた。


「良かった、お姉ちゃんが無事で・・」

「どうしたの? 何?! リョウちゃん顔に血が!!」


ほんのついさっきまで楽しく話をしながら家族で歩いていたはず。

京華は頭が混乱し、上手く思考出来ない。

でも、今、自分の目の前の出来事が普通で無いことくらい解った。


「りょ、リョウ、ちゃん。キョ、キョウ、キョウカちゃん、、、ぶ、じ、でよ、かった。」

「!! お母さん!?」


聞き慣れた優しい声だが、その声には力を感じられない。

心の奥から、嫌な感覚が沸き上がる。

その感覚は決して受け入れる訳にはいかない! 訳も解らず、でも確実に京華は否定する。

でも次の瞬間それは現実だと嫌でも知らされる。

大きな車の下敷きになりながら、必死に自分に手をさしのべる、母親の姿。

その手は何とか京華の頭に触れると優しく撫でてくれる。


「リョウ、ちゃん、け、が、してる、の?」

「だ、大丈夫だよ。ちょっと背中を切った、だけ、だから、それより、お母さんが!」


痛みを堪えているせいか、目の前の母親の姿を見たせいか、涼介はその可愛らしい顔をグシャグシャに泣きながら必死に母親の手を掴んで話しかける。

京華も必死に手を伸ばし顔中血だらけの母親の顔に触れる。

決して軽傷で無いはずの京華と涼介だったが、今はそんな事関係なかった。

とにかく大好きな母を助けたい、ただそれだけで少しでも近づこうとする。


「よ、く、聞い、て、ふ、たりと、も。」


途切れ途切れのか細い声で、でもしっかりと二人を見つめる母。


「こ、れから、二人、たい、へん、だ、けど仲良く、がん、ばるの、ゴホッゴホッ!」


必死の言葉も、段々小さくなり、咳込む度に吐血する母親を見て、二人は気が狂いそうなほどに成りそうなのを必死に耐えその言葉を聞く。


「京華、涼介を、守って、あげて。涼介、京華の事、た、のむわよ。」

「そんな、そんな事! 言わないで! 母さん!」

「そ、んな、顔、し、な、いの。び、じん、が、だい、なしよ。」


突然、二人が握っている母の腕から力が抜けていくのを感じた。


「「!!」」

「ご、めんね。ほん、と、に、、ご、め、、、ね、、、、、、く、、やしい、、、、よ、か、み、、さ、まなんて、いないの、、、、ね、、、、、、、」


この日、二人は、大切な人を失った。





『・・・・・こ、の事故で、信号無視をして事故を起こした男性は、現在逃走中で、警察は厳戒体制敷き、男の行方を追っております。』 

ありがとうございます。

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