魔王登場 え? 2
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ぜひ読んでやって下さい。
「失礼いたした! この様な醜態なんとお詫び申し上げれば良いか。この責は神王様のお好きにご采配いただき、どのような刑罰をも受けさせてもらう所存。さすれば少しは魔界の代表として償う事ができましょうか?!」
あまりの迫力にびっくりするリョウだったが、常に冷静でと自分に暗示を掛けていたおかげか、表情に出さずにすむ。
(それにしても綺麗な人だな。将軍っていうからもっと厳ついイメージだったけど、どちらかといえば線の細い感じがするくらいの、言い方悪いけど優男って雰囲気だよね? でも言葉使いは厳つい将軍って感じ。)
リョウはイメージとのギャップに驚きながらも、このイケメン将軍がレティアをねえ~等と、この場とは関係ない事を考えていたりした。
(あれ? コーウェン将軍の後ろに隠れるようにして誰か居るぞ? 何だろう何か違和感があるけど、女の子かな?)
「神王陛下!」
ラティスの声で、色々考えていて少しの間時が止まった様に動かなかったのに気づいた。
「あ? ご、ごめんなさい! えっとコーウェン将軍でしたね。別に僕は不敬だなんて思ってませんから。どちらかと言うと僕が勝手にこちらに足を運んだ事の方がいけないのでしょうから、両成敗という事で不問にしません?」
リョウの不問の言葉を聞き、安堵の息を吐くコーウェン将軍。
そこへレティアが立ち上がりリョウの側まで歩み寄ると、跪くコーウェン将軍を睨んでいた。
「コーウェン将軍、書状では、魔王様も来られるとの事でしたが、どちらにおられますのでしょうか?」
「そ、それはですな・・・・」
どこか歯切れの悪いコーウェンにレティアが追い撃ちをかける。
「どいう事です? まさか魔王様の御来訪は虚偽だったのですか? 何故そのような事をされますのでしょうか? 事と次第によっては正式な抗議をせざる終えなくなりますがいかがか?」
迫力ある物言いいのレティアにコーウェン将軍は何も言い返さず、ただ何かに耐えている様に見えた。
「ねえ、レティア? あそこにおられるのが魔王様なの?」
リョウにはコーウェンの後ろに一人の女の子が立っているのが見えるので、レティアに訪ねてみたが、そのレティア立ちは困惑の表情をみせた。
「え? あのう? リョウ様、こいつはコーウェン将軍で?」
「え? こいつ? あ、違う違う! レティア達は見えないの? ああ、そうか! あんな小さな女の子が魔王なんて事ないから、そう言ってるんだね?」
得心を得たと言わんばかりの晴れやかな表情で納得するリョウだが、レティア達にとっては納得出来ないでいた。
「い、いえ、その女の子という者も見当たらないんですが?」
「え? そんなはずないよ? あの燃えるような赤い髪に同じ色合いの瞳を持つ愛らしい4才前後かな? 白いフリルの付いた黒のドレスを着た女の子がこっちをジーーと鋭い視線で見つめてるよ?」
リョウの言葉に、レティアやラティス達は困惑するばかりだが、それとは反対に驚愕の表情のコーウェン将軍がいた。
「神王様?! まさかお見えになるのですか?」
「う~ん、皆の言っていることが良く解らないんだけど、ちゃんといるじゃない。女の子が!」
そうリョウが言った瞬間だった。
そのリョウにしか見えない女の子が、スッとかき消えたかと思った瞬間、ドンという爆音が謁見の間に轟き、窓のガラスをビリビリ! と大きく震わせた。
その音に此処にいる殆どの神族が注意を引き付けられ、自分達の王がどういう状況に陥ったのか見ていた者は皆無だった。
しかしそんな中で、その異常さに最初に気付いたのは、レティアだけだった。
「な! な!? なんなんですか! それ!!!」
動揺するレティアが指差すその先には、リョウの細い腰にがっしりと両腕を回し、可愛らしい胸に顔を押しやり、グリグリとその感触をこれでもか! という感じで堪能している、歳のころは3、4才程の可愛らしい女の子だった。
鮮やかな赤色の少し癖のある髪を、黒いリボンで二つに纏め、そのリボンと合わせた様な白いフリルの装飾を施した黒のワンピースを着た幼い少女。
リョウの胸を堪能し満足したのかその行為を止め、何故かレティアに向けて赤い瞳の鋭い視線を放っていた。
小さな顔も端正な作りでリョウと比べても甲乙つけがたい美少女なのは間違いなかったのだが、ただ、鋭いと云うよりやけに座った感じの単に目つき悪さが、残念な美幼女であった。
その目つきで睨まれていたレティアに悪寒が走る。
(な、何!この女の子!? この私が恐怖を感じている? 誰?)
実は此処までの出来こどは、ほんの一瞬の間の出来事で、それに反応出来たのは、リョウ以外ではレティアだけだったのだ。
さすが六大天使筆頭というべきか?
ただ、流石にその他のラティス達も強者ぞろいで、一瞬は遅れたものの直ぐに臨戦体制に入り、各自の武器を構えその幼女の鼻先を囲う様に突き出していた。
レティアは双剣、ラティス大きな宝玉を先端に付けた杖を、グニエルは自分の身の丈程もある大剣を突きつけた三人の天使に囲まれた幼女だったが、何食わぬ顔で三人の顔を順番に見、最後にレティアの所でその視線が止まった。
「あんた、レチアね?」
その姿から想像出来そうな、いやそれ以上に可愛らしい舌足らずな声が発っせられた。
「レチア? ああ、そう私がレティアよ。それが何? 早くリョウ様から離れなければその命保証しかねますよ?」
警告を突きつけるレティアだったが、その自分の声が震えているのに気付く。
(私が怖がっている? 目の前の小さな女の子に?)
二人の視線はそのまま固定され、特にレティアは動かす事すら出来なくなっていた。
冷や汗が流れる。
その緊張した空間をさらに凍らせる言葉が幼女より放たれた。
「レチア、あんたを殺しゅ。」
読んでいただき有り難うございます。




