プロローグ
外宇宙からの侵略者といわれて人はなにを想像するだろうか。頭部が大きく手足が細いグレイ型宇宙人、手足が無数に生えた節足動物のような宇宙人、あるいは近年ではアニメの影響で普通の人型の宇宙人像も珍しくはなくなっているかもしれない。さてここに宇宙人の造形についての一つの説が存在する。それが宇宙人が人型をしているのは当然であるという説である。その説によれば宇宙人とはすなわち元地球人であるという。つまり科学を発達させた末に地球を飛び出した古代人や、彼らが操る人工物の正体が我々が宇宙人と呼ぶ者の正体というわけだ。
無論、現代に置いてそれを信じている者などほとんどいない。しかしこの説は考え方によっては非常に重要な問題を抱えていることに気づくことができるだろう。仮に宇宙人と呼ばれるものがかつて地球で暮らしていた存在だとして彼らが再び地球で暮らす意思を示した場合、現在の地球に暮らしている人類は彼らにどう対すればよいのか。普通に考えればその要求を拒絶すればよいだろう。自分たちから出ていきながらいきなり戻ってきて、そこは我々の住処だったのだから返せと要求されたとして、そんな理不尽な要求に簡単にはいと頷けるはずもない。しかし、もしも彼らがこう言ってきたらどうだろうか。われらはかつて地球から理不尽に追い出された者たちの末裔だ、その証拠も持っている、追い出したのはお前たちの先祖だ、と。
これはそんなあり得ない可能性が現実となった世界の物語である。