3皿目
天野 ツバサ…あまの つばさ。佐野の幼馴染。18歳、男。殺し屋。
天羽 勇実…あもう いさみ。佐野の隣人。16歳、女。高校生。
喫茶店…『カトラリー』という店名で営業している、天野の住む場所の近くにある喫茶店。ポニーテールの女性店長がおり、一人で切り盛りしている。珈琲から軽食、菓子までなんでも美味しい。
【5/23 AM10:30】
「ふぁ、あ」
大きく欠伸をして、終えた仕事の成果を見つめる。土曜日の午前中だというのに労働をするなんて、週休完全二日制が泣いているのではないか。
「うーん、角度良し血抜きよし、見栄えも…まあまあ良し」
両手の人差し指と親指で四角いフレームを作り、まだ新鮮な遺体を眺める。まさに今死後硬直が始まっており、殺してから無理やりとらせたポーズのままちゃんと固まってくれそうだ。始末屋がくるまでの僅かな間はまるで芸術のようになるだろう。自殺っぽく見せかけた他殺、っぽい現場のポーズ。自分でも何を言っているかわからないが、これは自殺っぽく見せかけた他殺っぽい現場なのだ。
「我ながらいい仕事をしたなあ」
別に依頼は「殺す」だけだからこんなに芸術的なことをしなくても良いのだけれど、気分の問題だ。殺し屋としてただ死体を横たえるだけ、なんて勿体無いじゃないか。血の気が失せた死体の頬を撫でたところで興味が失せたので、現場から引き返す。
「さてさて帰るかあ」
本来ならば、今日はとある女の子とお出かけをする予定だったのだ。せめてお詫びにシュークリームでもあげようか、でも彼女が作ったものの方が美味しいかな。まだ明るい路地裏から踵を返し、近くの喫茶店への近道を辿る。
「ここを曲がれば…」
野良猫を跨いでパイプや室外機の隙間をくぐり抜け、大きな道に出れば喫茶店はすぐそこだ。今までいた場所からの道でも本当はどうということはない。けれどここ最近起き始めている謎の事件で警察の警戒が酷く、表道を通るのははばかられる。
全く面倒だ。なんて事件を起こしてくれたのだろう。人数としては少ないけれど『警察がいる』事実だけでこちらは動きにくい。迷惑このうえない。暗い気持ちになりながら路地を抜け大きな道に出た。
出た瞬間だった。
「あ」
目の前に、芸術性のない死体が映った。




