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エンドロールは皿の上  作者: 龍崎悠
13/18

12皿目

コレクションルーム…本やCD、DVDなどばかり集められた篁さんの趣味の部屋。一部屋埋めて尚スペースに困っている。貸倉庫とかあったら便利だろうな、でも家に置きたいものばかりだし。どうしよう。そういう訳でとりあえずウォークインクローゼットも埋め始めた。

出演作の原作小説…大方グロテスクなもの。たまに純愛ストーリーなどもある。

【5/31 PM9:30】


五月も最後だと言うのに、俺と篁さん、それから純星さんは篁さんの家にあるコレクションルームで、頭を抱えていた。

「なんでこんなことになったんだか…」

「二人が事件に首突っ込んだ時からかな。ほら、そんなこと言ってないで早く探しなよ」

「とても正論…」

篁さんのコレクションルームは広いが狭い。本来ならば書斎にするような場所を彼は全部、音楽CDやMD、レーザーディスクにDVD、出演作の原作小説、アルバムその他諸々が詰まった棚で埋めつくしている。

足の踏み場こそあるものの、地震なんて来ようものなら全部落っこちてしまうのではないだろうか。そう聞いた時、彼は「大丈夫。外付けのカバーがあるから」と笑っていた。なら心配ないのかもしれない。


閑話休題。

今、全員で必死こいて探しているのは過去の新聞だった。古新聞あるよ、ここ二年のしかないけど、という言葉に甘え、とりあえず捜索してみることにしたのだ。

何故そんなことを?簡単である。情報収集中にとある違和感に純星さんが気がついた、気がついてしまったのだった。


「衣替えした記憶はある?」


制服から解放されて早三年。大々的にはせずとも箪笥の整理で服を入れ替えることはままあることだ。季節の変わり目に天気予報を見て、ああ明日は冷えるな、と上着を出したり手袋を探したり。だがここ最近それをした記憶はない。手持ちの服が少ない人はそもそもの心当たりがないだろう。それくらいであれば、違和感にすらならない。けれど。


「っていうか、先月ってあったっけ」


ありますよ、という声は上がらなかった。篁さんも押し黙ったままで、そういえばもう六月になると言いながら何日過ぎたっけ。何度も同じニュースを見たような?暖かくなったと話して、喫茶店の春メニューを見て、コンビニの新商品はずっと「新登場」のポップがついたまま。

一笑するにはあまりに大きな違和。それを無視できず、とりあえず新聞だと駆け込んだ。そういう訳だ。杞憂だと思われて構わない。事実、冬なんて何年も前に来たきりのような、気がする。

ある筈の場所に無かった新聞を探して、本棚の裏からファイルの中身まで虱潰しに。よくよく考えたら阿呆みたいなことをしていると思いながら出した本を仕舞う。と、後ろから純星さんの「あった!」という声が聞こえてきて振り返る。

「あった、これでしょ見覚えある!先月の新聞だ!」

「純星くんさすが!信じて…はいなかったけど」

「見つけた人に対して失礼が過ぎないかな」

「で、何月の新聞なんですか」

ドヤ顔で微笑んでいた純星さんはこちらの言葉にその笑みを消した。そのまま手に持った新聞を全部渡してくれる。乾いた再生紙の印字を、篁さんと目で追った。

日付は____全部、五月。

「…五月三十日、三十一日、一日…」

「そんな…そんな、訳が無い。だって日付が混ざらないように重ねたんだ、月が変わったらビニール紐で括って…」

篁さんが悲痛な声を上げた。いくつか見つかった新聞の束、確かに彼が言うように纏められているけれど、全部の日付は五月。束が三十一日で終わると別の束へ、また一日に戻って、似た内容の記事が繰り返される。更新されない過去だったものが、この間の事件でようやっと殺人として載っていた。どうして気が付かなかったんだろう。

「まあ、良かったよね」

純星さんが口を開いた。珍しく気弱そうな声で、何も良くない、あんたは何が良いと思ったんだ。やめてくださいと訴えようとしたそれは音にならなくて、胸の中へ滑り落ちる。

「……この事件のおかげで、気が付けて……」

そのまま彼は黙りこくってしまった。

篁さんも俯いたまま何も言わない。半分よりも太くなった月がこちらを見下ろしていた。

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