七話 勉強会withエマ
仕事終わりにホイっとな
あ、評価してくれた方ありがとうございます!
とても励みとなりました!
翌日、朝食を食べ終えた俺達はテーブルで向かい合いさっそく魔法の研究に取り組むことにした。
「それでは研究を始めようか!」
『うぃっす!師匠!』
「師匠……。ふむ、悪くない。ムフフフ」
冗談が通じてねぇ。顔がニヤけてやがる。
『早くしろ、エマ』
「な!?し、師匠と呼んでくれないのか……兎よ…」
『わ、わぁーったから!悲しそうな顔するな、揺さぶるな、師匠!』
エマは俺を掴み持ち上げて揺らしてくる。は、吐き気が……。
「うむ、師匠がしっくりくるな」
いきなり手を離され落下するが何とか着地する。
『おい!いきなり手離すな!』
「ではこれから魔法の研究を始める……と、言いたいところだが兎はまだ魔法についてあまり知っていないだろう?ということで今日は魔法についての基礎知識を教えていこうと思う」
『おい!無視すんな!』
まあいい。やっときたか、ファンタジー世界の叡智の結晶、魔法。
ああ、早く炎出したりグルグルしたりアバダなんたらしたりしてぇなあ。
「まずは魔法の歴史からだ。この世界、オール大陸が生まれた時魔法はまだ存在していなかった……らしい」
『らしい?』
「ああ、人の世界には宗教というものがあってだな、まあ簡単に言うと超常的存在を崇める集団たちなんだがその辺はどうでもいい。その宗教で一番有名なユウキ教っていうのがあるんだがそいつらの聖暦書にはこう書かれてるんだ。【今世に創魔と助勢の異神が突如と現れ“魔”を広めた】とな」
『おーん』
神様ナイス過ぎるわ。こんなにロマン溢れる世界にしてくれて、感謝の雨をここに降らしてもいい。
『まあ、実際にはその時代に魔法を発見した奴が神格化されてるだけだろうなー。歴史なんてそんなもんっしょ』
「その説も一理あるかもしれないが神は実在するぞ?現に加護を貰ってる人もいる」
『マジか……』
本当にいたとは……。
もしかすると地球にも本当はゼウスやらイザナギやらいたのか…?
「とにかく異神が広めてくれたお陰で我々人類は現在までで十種類の魔法を使えるようになった」
『結構あるな。火とか水みたいな属性で分かれてるのか?』
「ああ、火炎、操水、疾風、雷撃、大地、闇黒、の〝古来魔法〟。回復、付与、時空の〝多元魔法〟。そして〝新魔法〟の聖光だ」
だいたい想像通りの種類だった。しかし古来魔法や多元魔法と称されているのは何なのだろうか。
『古来とか多元ってのはどういうことなんだ?』
「古来魔法っていうのは魔法が存在した時に生まれた魔法たちのことだ。逆に多元魔法は異界からきた英雄達が広めてくれた魔法なんだ」
異界の英雄達、という言葉を聞いて俺自身の状況と重ね合わせる。
姿は兎といえど俺自身も元からこの世界の住人だった訳では無い。
『異界ってこの世界以外から人が来るのか?』
「そうだな。異界から来た人は〝召致者〟って呼ばれる。基本的には私達で対処が出来なくなった危機が迫った場合にだけ異界召喚が行われて召致者が来るらしい。異界召喚によって呼ばれる人達は性格性別は違えど、誰もが強力な才能を持っているから助けを求めるんだ。最近も邪神の予言で呼ぶか呼ばないかで……って話が逸れていくなこれでは」
もしかしてと思って聞いてみたが、異界の英雄達はやはり俺と同じで他の世界から来ている人のようだ。俺は兎の姿だけど。
それと召致者が魔法の種類を増やしたらしいがどうやったのだろうか。召致者が元のいた世界から持ってきたのだろうか。
最後の邪神の予言というのも気になる。知りたいことが多いが今は魔法について聞くか。
『なるほどね。異界の英雄達についてはまた別の機会で聞くわ』
「ああ、そうしてくれると助かる。今は魔法についてだからな」
『その魔法についてなんだが魔法の種類の数って決まってたりしてるのか?回復とかの多元魔法って元々あったのか?』
俺はエマに疑問をぶつける。
予想は立ててはいるが魔法の知識を持っている人が目の前にいるのだから確認出来ることは確認しておこう。
「いや、多元魔法と分類されている魔法は元々なかったらしい。しかしある時代で強大な敵に立ち向かう仲間を支援したいと思った召致者が他者の力を上げる付与魔法を、またある時代では病魔に蝕まれた人々を救いたいと思った召致者が癒しの力を持つ回復魔法を考えついたらしい」
『なるほど、これからも増えていく可能性はあるのか』
「そうだ、その増えていく可能性の一つが新魔法の聖光魔法だ。聖光魔法は今から百十三年前に人族のタナエル・ピタヤが編み出した魔物に対して威力が上がる魔法なんだ」
なるほどね、一応無限大の可能性があるって訳か。
『ふんふん、そういや回復と付与の経緯は分かったが時空は誰が考えついたんだ?今までの流れだと時空関係の危機って相当ヤバそうなんだが』
「あー、時空魔法はな、あんまり情報が残ってないんだ」
『残ってないとな?』
エマは頭を掻きながら困った顔をする。
「時空魔法について分かっているのは少しの〝真言〟と古来魔法よりは後に創られたってだけなんだ。もしかしたら国のお偉いさん達はもっと情報を持っているかもしれないが一般人の私が知れているのはこれだけ。時空の〝適性者〟も全然いないから魔法の中で一番研究のしがいがあるのに一番成果が出てない魔法なんだ、ハァ……」
やれやれといった感じでため息をつくエマ。
それにしてもまた新しい単語が出てきたな。
『適性者ってのは?』
「ああ、そうだな。魔法についての歴史と種類についてはそこそこ終わったから次は適性について話すか」
そう言うとエマは立ち上がり、棚の引き出しの中をごそごそを何かを探す仕草をしている。
次々と引き出しが開けられ、ようやく見つけ出したらしいエマはまた席に座り話を続ける。
「さて、少し探し物に時間がかかったが適性の話だ。例えばだが人には木登りが出来る奴がいるが出来ない奴もいる。それは魔法にも言えることで人によって扱える魔法があったりなかったりする。それが魔法の適性なんだ」
『ほーん。ん?待って、じゃあ……』
「そう、動物や魔物は魔法は使えないとされているが適性はちゃんとある、もちろん兎のお前にもな。」
マジかー!全部使えないのかぁ……。
「そしてここが研究を始める前の最初の鬼門。魔法の適性は全部持っている奴もいれば全部持ってない奴もいる。兎にはここで研究を始めるためには何がなんでも一つ以上は適性を持っていてもらわなければならない」
二度目のマジかー!本当に言葉通り全部使えない可能性も出てくるのか。
『んで……その適性ってのはどうやって分かんの?』
「その分かる道具をさっき探していたんだ」
その言葉の後にエマは俺の目の前に人が鷲掴み出来るくらいの濁ったガラス玉と台を置く。
「これが適性を知れる道具〝色映しの水晶〟だ。触った対象の魔力を識別して適性のある魔法の色を映し出してくれるようになっている」
目の前にある色映しの水晶はまだ灰色に濁っている。
これに俺が触れば……色が変わるはず。
「私たちは基本手の平を水晶に当てて魔力を吸い取らせるが、兎のお前のそれでは小さ過ぎて多分測定が出来ないだろうからできるだけ体と水晶が触れるように触るといい」
『お、おう…』
すぅ、はぁーと深呼吸して心を落ち着かせる。
一つ。一つさえでればいいのだ。そう思えば少しは緊張感が解れる。よし。
俺は覆いかぶさるようにして水晶に抱きついた。
数秒後、水晶はほんわかと淡い光を放ち始める。
「よし、光り始めたらもう離れてもいいぞ」
『ういうい』
離れた俺はエマと一緒に水晶を見つめる。
淡い光はだんだんと弱く輝きを失い、残った水晶には………
五つの色が映し出されていた。
『よっしゃあああああ!!』
「やったな兎!やはり私が見込んだだけのことはある!」
『はっはっは!あったり前だろう!?なにせ俺は〝天才〟なんだからなぁ!』
俺とエマは狭い部屋の中でくるくると回りながら高らかに笑い合う。
薄暗く埃臭い部屋だったが、この時だけは水晶の色も相まってとても華やかに感じられた。
「それで色の方は……赤、緑、茶、火炎に疾風、大地だな!火炎魔法を教えれるのはとても楽しくなりそうだ!それに橙色の付与、おまけに時空の紺色まで!多元魔法にも適性があるなんてやっぱりお前は最高だ!」
エマはバシバシと背中を叩きながら適性色の種類を教えてくれる。
そうか、全種類ないのは残念だが十種類中、六種類も使えるのはとても良い。
火炎は威力がありそうだし、大地は守りに使えそうだ。疾風で臨機応変に搦め手を使ってもいい。補助も付与が使えるし時空は想像がつかない程色々な事ができそうだ。
「よし、これで使える魔法がわかったから次は扱い方についてだな」
『待ってました!』
ようやくきた魔法の使い方!これで俺も魔法が…ぐっふっふっふ。
「魔法には発現させるのに絶対な条件が一つあってだな、それが〝真言〟だ」
『ほう、真言ってのは昨日エマが魔法を発現させた時に言った《火球》ってのか?』
「察しがいいな。そうだ、《火球》のような真言を言わなければ魔法は発現されないんだ」
説明をするエマの手の上で火の玉が踊り揺れる。
「そして魔法を発現させるのに真言を交えて三つの方法があるんだ」
『発現させるのにも色々なやり方があるんだな』
「ああ、一つ目が私が先程から使っている〝無詠唱〟。真言だけで発現させるから発現時間は短いが他の方法と比べて威力が弱いんだ」
速攻性のある方法だな。もしかしたら連続で魔法を使うのに適しているかも。
「二つ目は〝詠唱〟だ。真言の前に〝呪文〟という言葉に魔力を交ぜて放つ文を付け加えて発現させる方法だな。呪文を付け加えている分、無詠唱とは威力が段違いに上がるな」
こちらは火力重視か、ロマンを求めるならこっちか?
「最後の三つ目が〝魔法陣〟だ。こちらは詠唱の呪文の代わりに魔力で編む陣を使って、魔法の威力や方向性を調整することが出来るぞ。魔力を流し続ければ陣を好きなところに設置することも出来て多様性があるが如何せん陣を組むのが時間がかかるし面倒だな」
時間を犠牲に魔法の調整が出来るのか、うーん捨て難いな。
「まあこれらは使っていくうちに自分に合ったものを決めていけばいいさ」
『そうだな。とりあえず全部使ってみればいいか』
何事もやってみなければ分からない。色々なやり方を試していくのは結構好きだ。
『んで、んで!もうこれで魔法を発現出来るのか!?』
詠唱だとか属性だとか教えられてて魔法が使えてないのはとても歯痒い気分だ。
「んー、まあ、いいか。魔法使っちゃうかもう」
『やったーー!さすが師匠大好きー!』
師匠の発言に歓喜の声を上げる俺。
その姿を見て師匠は嬉しそうな笑みを浮かべる。
「初めての私の弟子だからな、ちゃんとした事から教えていこう思ったが……やっぱり性に合わんな。実践形式のほうがピッタリだ」
そう言うと師匠はドアにに手を掛ける。
「さ、この部屋じゃあ狭っ苦しいから外で魔法をぶっ放していくぞ」
『おうさー!』
俺の掛け声とともに俺と師匠は部屋を後にしたのだった。
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