現代社会の夢
行き交う人の群れ。
俺はどうしてこんな所にいるんだろう。周りの似たような格好をした、まるでコピーのような人間を見て思う。
今日も上司に言われるがままに仕事をこなす。俺はこんな仕事がしたかったのだろうか。もっと俺は、このデザインを、例えば今作っているこの器も俺の手にかかればもっと、上手く言えないがひとつ頭の抜けたものにできる自信があるんだ。
「こら!ぼーっとするな!」
また上司からの叱責を受ける。朝から晩までほとんどこの調子だ。上司は最近家庭環境が上手く行ってないらしく、こうして俺でストレスを発散する。
今までこうしていじめられていた俺の同僚は、病気になり寝たきりになってしまった。とにかくこの仕事はストレスをためないことが重要だ。
でももう俺も限界だった。上司が外出した後、上司の座る場所におしっこをかけ、材料を盗み、外へ抜け出した。
空はなんて広いんだろう。俺を今まで縛っていたものはなにもない。俺は本当の自由を手にいれた。もちろん、俺のしたいことをするつもりだった。
仮住まいを探し、そこで材料を練り、今まで頭の中に描いていたデザインを現実に掘り起こす。よりスタイリッシュに、今までのゴツゴツしたデザインから、あえてツルツルの飾りが少ないデザインに。
この時、俺は生まれて初めて生きていると思えた。
しばらくして、俺の器を売り込みに行った。
「これは画期的なデザインだ!ぜひ真似させてほしい!」
「なんて機能的なんだ!俺の鉄と交換してくれないか!」
「この器の名前は?こんなの見たことない!」
村人達は一斉に俺の器を求めた。俺は自分が、魂を込めて作った作品に名前をつけた。
「弥生土器だよ。」