~ 千津ちゃん ~
通~りゃんせ 通りゃんせ~ ♪
此処は 何~処の 細道じゃ ~♪
荷ほどきも終わり 疲れていたのか うっかり うとうとと眠ってしまったら
懐かしい 童歌が聞こえてきた …
シクシク … シクシク …
此は 夢かしら …
夢の中で 着物姿の 小さな女の子が 私に背を向け踞って 泣いていた …
「ねぇ… あのっ … 何故泣いているの? 」
私は 小さな女の子が 可哀想で
躊躇いながらも 声を掛けた
「 シクシク … シクシク … 誰 モ 遊 ン デ ク レ ナ イ ノ … シクシク 」
小さな女の子は 背を向けたまま そう応えた
私は 何とか 女の子を 慰めてあげたくて
「そうだ !此~処は 何~処の細道じゃ~♪ 天神さまの細道じゃ~♪ 一緒に歌いましょ?」
女の子を誘った
女の子は パッと 顔を上げて 振り返り ニッコリと 愛らしく 私に 微笑んだ
其から 二人で 通りゃんせを歌った
歌い終わると 小さな女の子は 私の手を掴んで 手を繋いだ
紅葉みたいな 小さな手と よく言うけれど
子供の小さな手って 本当に 可愛いくて …
こんなふうに 子供と 手を繋いで歩く事を夢みてたのになって
そう思うと 涙が 溢れた …
小さな女の子 は クリクリした まんまるの瞳で 泣き出した 私を見上げて
「ドウシタノ? ドコガ痛イノ?」
心配して そう聞いてくれた
私は うううん! と 首を横に振って
「ごめんね 何でもないの … さぁ 次は何しようか~?」
女の子に そう言った
そうしたら 女の子が
「アノネ 千津ネ オ願イガアルノ … 」
私の手を引き寄せるように キュッと引いた
「なぁに?」
私は しゃがんで 女の子の目線に降りた
女の子は 真剣な目をして …
「千 津 ヲ 捨 テ タ デ シ ョ … オ 家 ニ 入レテヨ !!」
ガ ブ ッ !!
私の耳に噛みついた
「キャッ !!痛 ッ!!」
私は 跳ね起きて
耳を触ると ヌルッと生温かい血を触った
慌てて鏡を見たら 耳から 血が流れていた
怖かった …
怖かった … で も …
あの子が 可哀想で …
私は 家を飛び出して ゴミステーションに向かった
けれど 人形を入れた袋は見当たらなくて …
私は 肩を落として 部屋へと戻った
私は あの 千津ちゃんと言う 可愛いらしい女の子を 傷つけてしまったのでは ないだろうか …
耳を噛まれた事なんかより 其の事が気がかりだった …




