表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スカイ・ロア  作者: えむ
一、残光
3/25

03


 少年は空を見上げていた。

 ぽつぽつと星が顔を出し始めている。

 夜闇が迫るこの時分でもハッキリと星を視とめることができるのは、空気が澄んでいるせいだ。

 かつて空を狭めていた高層ビル群は、崩れ去って廃墟となった。

 かつて世界の発達を促していた電子機器の類は、磁気嵐の影響で一度全て滅んだ。

 かつて大地を覆っていた緑は、約一〇パーセントにまで群生率を低下させた。

 かつては──

 少年は「かつての世界の形」を知らない。知っているのは、砂漠と化した今だけ。

 遮る物も、者も。汚すものも何もない空。

 そんな空を見上げるのが、少年の日課だった。

 今年で八歳を迎えたばかりの身体には重労働ではあるが、近くの廃墟からジャンク品回収の仕事を終えたあと、冷え込む前の砂原に寝転んで星を眺める。

 防塵防湿のモッズコートから覗く手はジャンク品で傷つき、かさぶただらけ。毎日それを繰り返しているせいで至る所がガサガサになり、高質化している。デザートブーツは擦り切れてボロボロ。

 頼るべき家族がいない訳ではない。

 両親と姉は先の戦争で殉職したが、祖父がいる。

 それでも少年が廃墟に通い詰めるのは、それが自分に課した存在理由だからだ。

 廃墟からほど近いところに少年が生活の拠点としているオアシスがある。

 そこで暮らす人々は、それぞれが何かしらの仕事をし、衣食をまかなっている。今は何においてもあまり裕福とは言えないから、子供といえども労働力として動かなければならない。それでもできる事は限られているが。

 ただ、オアシスにはたった一つだけ掟がある。

 『働かざる者食うべからず』

 生きるという事。

 助け合うという事。

 そうしなければ周りが苦労をする。

 なにより少年は、もう何も失いたくなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ