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スカイ・ロア  作者: えむ
六、存在意義
24/25

04

 そして、と綾乃は続ける。

『パイロットが二人。これは根性論で精神論なんだがね、二人の方が、強いに決まってんだろう?』

 それが真意なのかどうかはともかくとして。

 蒼衣は考える。感情というものを。

 鋼介が殴り飛ばされたとき、胸の中に灼熱したものがこみ上げてきた。真っ赤なそれは────怒り。

 数年前、雪が降りしきる中で逃げ惑っていたあの母娘の死を見たとき、胸の中にこみ上げてきた青い熱は──悲しみ。

 その他にも、いくつもあった。形容しがたい胸の中にわだかまる様々な色の熱。

 蒼衣はその正体に辿り着く。そして同時に思う。存在意義とは何なのか。

 思案しているとコクピット前面中心にウインドウがポップアップ。


 SONICモードに移行しますか?


 押せば何かが変わるのかもしれない。踏み込めば、何かが変わるのかもしれない。

 それは分からないけれど。

 ──私は、帰ってきた感情を、二度と捨てたりはしない。

 蒼衣がYESを選択した瞬間、ブラン・エフェメラルの機体が鋼介の人型機体胸部に空いた穴に這入り込む。突き出たブラン・エフェメラルの機尾が四つに割れスライドして、隠れていたオーバードブースター総計八基がその姿を表した。

 コクピットは二つ。

 上部に蒼衣が。下部に鋼介。

 接続の最中、敵機オニキス・ライトが再度放ったクラスターミサイルの嵐がブラン・エフェメラルに殺到するが、二人は合図なしで同時に操縦桿を倒した。

 直後。

 ブースターが灼熱。羽のように広がったフォトンが空気を弾き、機体が消えた。

 今までの速度の比ではなかった。一足で音速を超え、衝撃波をまき散らしながら弾幕を潜り抜ける。

 殺到するクラスターミサイルの弾頭。

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