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それに、言ってしまえばこの事態は、自分が作り出してしまったと言っても過言ではない。やっとの思いで購入した石が、ヒヒイロガネだと知らなかったとしても、この状況は鋼介が原因で起こってしまった。だったらやる事は決まっている。責任の取り方は、決まっている。
「おい、お前!」
鋼介は黒銀機体に向かって言う。
「お前の目的はヒヒイロガネなんだろ! だったら持って行けよ。僕が、僕が持ってるから! ばーちゃんと蒼衣姉ちゃんは関係なくはないんだろうけど、でも、そんなの、後付けの理由じゃないか! 見落としてたのはお前だ! それを、思い出したように蒸し返して、後付けて────」
途切れる鋼介の声。
黒銀機体の左腕が軽く振るわれ、捉えられた鋼介の身体が吹き飛んだ。小さな体は砂上を転がり、テントに突っ込んでようやく動きを止めた。
蒼衣の位置から、見える。
ぐしゃぐしゃにひしゃげたテントの骨組みの上で横たわる鋼介が。ぴくりとも動かない、 義弟の身体が。
フラッシュバックする。
数年前の。任務の。
雪が降りしきる景色。母娘。
「──────」
瞬間、蒼衣は、胸の奥底からこみ上げてくるの感じた。そして同時に、
「──来い! ブラン!!」
自分の手足とも言える機体名を叫んだ。
直後に空に響き渡る甲高い音──動力音。エンジンが出す打ちつけるような鼓動ではない。伸び続ける甲高い絶叫。光の羽が空気を切り裂く時にまき散らす飛行音。
爆風と共に現れる光沢のない白。
傷一つない機体は、スライドしてコクピットを開け広げた。




