02
白が動く。六枚翼が空を弾く。光の尾を横に薙ぎ、機体が旋回。通り過ぎていく爆風を紙一重で躱し、一足に数十メートルの距離を開け、続けざまに殺到する弾幕すらも躱して躱して潜り抜ける。そして一瞬にして相手の懐に潜り込んだ。
ここが領域。
──斬る。
ブラン・エフェメラルが有する明確な個別兵装は、遠距離系で言えば小型電磁加速ユニットによるレールガンのみ。その唯一の武装でさえも牽制的な使用しかしない。
斬撃による接近戦を得意とする白い機体は、単なる機動力であるはずのフォトン翼を、まるで刀のように振り抜く。高エネルギーで出力される強靭な刃を。
一閃。
か細い。しかし鋭い斬撃音が木霊する。
すれ違いざまに振り抜いた刃が金属を切裂き、標的を撃墜したのだ。──だが、墜ちたのは白い機体の方だった。
断線した内部回路がショートし、電光を撒き散らす。
数百もの斬撃をまともに受けてしまった機体は規定の耐久限界を超え、システムフリーズ。
斬撃音は一つであったはずだ。見落とす訳がない。見逃す訳もないはずだった。
──有り、得ない……!
機動力であるフォトンの噴射口を潰され、ブラン・エフェメラルは夕闇の中を墜落する。
複数のナノカメラ・アイが捉える黒銀の人型機体〈MADO\frame‐next〉。
〈MADO\frame‐first〉の正統後続機シリーズであるその機体は、腕甲から出力したフォトン刃を振り払い、墜ちゆく最強の先代を見下ろしながら言った。
『あんたらの伝説は、既に過去なんだよ』
他の追随を許さない。最強の機体シリーズ〈MADO\frame‐first〉。
しかし、それはもう────
過去の話なのだ。