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平衡感覚を取り戻すのに少し時間がかかりましたが、僕は、砂漠につっこんだ物の正体を確かめるために、すぐに現場に向かいました。
砂漠につっこんだ物がもしも敵国の機械だったりしたら、事ですから。
でも、結果的には違ったのです。
墜落現場を見るとそこには菱形流線形の白い何かが電光をまき散らしながらその機体を横たえているではありませんか。さらにその機体の一部がスライドしていて、乗り込んでいた人が外に投げ出されていました。
そのとき僕は、目を疑いました。
だってそこに横たわっている人は、よく似ていたのです。大好きだった姉の顔によく似ていたのです。
僕は、戦争で父と母と、大好きだった姉を失いました。
父よりも母よりも、なによりも大好きだった姉──蒼衣姉ちゃんによく似た人を見つけた瞬間、僕は、泣いてしまっていました。姉の名を、叫んでいました。
蒼衣姉ちゃんによく似たその人は、右目から血を流していました。身体のあちらこちらがズタボロになっていました。僕が叫んでいたのは、もしかしたら、また蒼衣姉ちゃんを失うかもしれないと思ったからなのかもしれません。
とにかく僕は、蒼衣姉ちゃんによく似たその人を、キャンプまで連れて行ったのです。
これが四年前の話です。
僕は最近誕生日をむかえ、十二になりました。
日本における成人とみなされる年齢は二十だったようですが、そのルールはだいぶ前に廃れてしまったようで、誕生日当日に祖母からお酒をいただきました。すごくまずかったです。
蒼衣姉ちゃんが生きていたら、十四歳になります。
僕が助けたその人は、少し大人びていましたから年齢までは一緒とはいかないのでしょうけれど、でも、似ているものは似ているのです。瓜二つです。三つかもしれません。
そして偶然にも、僕がその人を助けた日というのは、蒼衣姉ちゃんの誕生日だったのです。
なおさら。
ことさら。
ともすれば、何か暗示のようなものを感じても、おかしくないじゃないですか。




