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スカイ・ロア  作者: えむ
四、漆原鋼介
14/25

02

 今世紀最大の怒りといっても過言ではありません。いや、過言かもしれません。

 でも僕は、あんなに怒った祖母を未だかつて見たことがなかったのです。それと同時に、祖母の言葉が気になりました。──お前には、適性はあるが今はその時ではない、と。

 祖母がどんな意味で言ったのか。僕にはわかりません。

 ただ、ロボットの胸部に空いた、人為的な穴の存在が、関係しているようにも思えました。

 祖母は、僕を叱る時は右手でげんこつをします。

 左腕はありません。

 祖母の左腕は、ロボットの起動時になくなりました。

 強制ダウン、と。祖母はたしかそのようなことを言っていました。詳細はわかりませんが、ロボットの活動を無理やり休止させるためのコマンドです。無理やり、というくらいですから、普通の方法ではありません。代償に、祖母は腕を失いました。

 僕のせいです。

 僕のせいで祖母は、利き腕をなくしました。

 オアシスキャンプの要であるエンジニアの命ともいえる腕を、失ったのです。

 服のボタンが掛けづらい──僕のせいです。

 箸がうまく使えない──僕のせいです。

 好きな仕事が、できない。

 ────僕の、せいです。

 僕は、腕だけでなく、祖母の人生すらも奪ってしまったのです。

 それでも祖母は、僕に優しくしてくれます。憎いはずなのに。憎くて憎くて、しかたがないはずなのに。

 だから僕は誓ったのです。

 守る、と。祖母のこれからは、僕が守るのだと。

 その数か月後でした。

 僕はいつも通り、廃墟に潜ってジャンク品を漁っていました。その日は少し潜りすぎてしまいまして、地上に戻った時には日も暮れ、空はとっぷりと夜に浸っていました。

 流れ星かと思いました。

 白く光る何かが空を横切ったのです。でも、途中でそれが星でないことに気付きました。だって、こっちに向かってきているのですから。僕は全力で横に跳びました。ぎりぎりだったと思います。遅れて到来した烈風に巻き込まれ、僕は砂丘を転がりました。

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