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スカイ・ロア  作者: えむ
三、漆原蒼衣
10/25

01

 少しだけ、昔の話をしようと思う。

 私は、元は漆原蒼衣ではなかった。

 私は、四年前までただの軍人だった。

 太陽フレアの影響で発現することとなった新金属〈ヒヒイロガネ〉。灼熱を思わせる紅蓮のそれを用いて製造された希望──〈MADO\frame‐first〉。超高速で空を飛びまわり、 単機にて戦況を覆すその戦闘兵器のパイロットだった。

 MADOは特殊な戦闘兵器。扱うには、相応の資格がいる。

 プロジェクト・ドラゴン・フライ、という計画があった。

 その詳細は、ヒトがヒト非ざるところへ到達するためのプログラムカリキュラム。平たく言えば、強化人間の創造である。

 それを施術された人間が戦闘兵器への搭乗を許される。私は、その中の一人だった。

 ナンバー7、ブラン・エフェメラル。それが私に与えられた名前だ。

 ドラゴン・フライの任務は、基本的にはヒヒイロガネの回収と、敵機の迎撃──敵国との戦闘である。覚えている限りの話で言えば、私が、私たちが投下された戦闘に敗北はない。なかったはずである。

 そんな中でも攻略困難な任務もあって──というのはまた別の話。

 ともかく、私はドラゴン・フライの一員だった。

 そう、「だった」。

 ドラゴン・フライは、誰でもなれる訳ではない。MADOに搭乗できるのが強化人間だけであるように、ドラゴン・フライになれる人間にも、それ相応の資格がいる。

 始めに少しだけ詳細を開示すれば、そこにあるのは、人体実験という非人道行為。

 投薬。

 テスタメント。

 強度検査。

 人間にそんなことを施すのは、法律に触れる。戦争中という非常事態の真っただ中ではあるが、法律は生きていた。ただ、それが適用されるのは、あくまで普通の人間。事実上、戸籍のある人間だけ。捨てられた人間はそもそも人間ですらない。

 つまるところ、私は、捨て子なのだった。

 仲間と呼べるか定かではないが、同時期にプロジェクトの施設に入所させられた人間は大勢いた。しかし残ったのは、私を入れてたったの二人だった。

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