戦闘?
「てめえ!何しやがったっ」
唖然としている人達の中で先に立ち直ったダートが叫ぶ。
しかし、問われた少年はその場で立っているだけであった。
「・・・・・・・」
「なんとか、言えっ!」
「・・・・・・・」
いくらダートが叫んでも少年は全く反応しなかった。
まるで、ダートの声が〝聞こえていない〟ような反応だ。
「くそ、お前ら、あのガキを殺せぇ!」
ダートの命令に五、六人が少年の前に立った。
男達は自分が持つ剣を抜いた。
この時、男達は余裕だった。相手はめくら、背後から忍び寄って殺す、気づかれないように殺す、方法は様々、そして簡単に殺せる存在であった。
男達は、剣を肩に乗せた、クルクルと回しながら少年の正面に近づいていった。
「死にな!」
一人がそう言い、剣を振るった。
普通、ここで少年は男の振るわれた刃に斬られ、死ぬ、というのが現実的な展開である。
しかし。
男の剣を少年は避けた。
「なにっ!?ゴハァ」
そして、男の腹に持っていた杖で突いた。
男は腹を埋めてその場に崩れた。
「て、てめえ!?」
「やっちまえ!」
「全員でいくぞっ!」
今度は複数の剣が少年を襲った。
しかし、少年は、〝見えている〟ように避け、男達の腹や首もとを突いたり、叩いたりした。
『めくら相手に何人がかりですか。酷いですね』
少年は内心で呟いた。
そして、そんな戦闘が続いて数分後には少年を殺そうとした男達が全員、地面に倒れていた。
「てめえ!何者だあ!」
今まで傍観していたダートが少年にむかって叫んだ。
しかし、少年は黙っているだけ。
その行動にダートの怒りが爆発した。
「いいか。くそガキ。調子に乗るのも、いい加減にしやがれっ!」
ダートは自分の得物である斧を横凪ぎに振るった。
しかし、
ガギィン!
ズパンッ!
金属音と何かが斬れる音が響いた。
「な、なんだとっ!?」
ダートは驚愕して自分の得物を眺めていた。
ダートの斧は持つ所と刃の部分が斬られていたのだ。斧の刃は放物線を描き、地面に刺さった。
そして、次の瞬間。ダートの腹から横一文字に赤い液体が噴水のように吹き出した。
「な・・・・・に」
ダートは自分が斬られている事にさらに驚愕した。そして、ダートは前を見た。そこには、日の光に反射して煌めく、刃を鞘に納める少年の姿が写った。
そして、その後直ぐ、視界は地面へと変わり意識は遠のいていった。